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「これ可愛いな」
「アスカってカジュアル系でハッキリした色が好きだよね」
「和樹は白とか好きだよなぁ。あ、このワンピは?」
「いいね、僕好み。じゃあアスカはこのカーディガンなんてどう?」
「流石和樹、分かってる!」
長いこと一緒に暮らしてるから、好みとか分かるんだよねぇ。
あと何買おうかな〜、と思ってた、瞬間。
ジリリリリリ!!
「え?警報?」
「火事でもあったか?」
スピーカーから流れ出したベルの音。
そして近付いてくる足音と、武器の気配。
「和樹、こっちだ!」
「え、うわっ」
咄嗟に試着室へ隠れて、カーテンを閉める。
火事が起こったからって刀を持ってる奴等がうろちょろするワケがない。
少し耳を澄ますと、会話が聞こえてきた。
「従業員と客、全て集めろ」
「シャッターを閉めるんだ。一人も逃がすなよ」
「我等の願いを叶えるため、ここにいる者達が必要だ!」
明らかにテロ予告だよな?これ。
まさかの巻き込まれた系ですか?
「……行ったな。出るぞ和樹」
「うん」
カーテンを開ければ、あんなに溢れかえっていた客の気配がしない。
全員連れて行かれたか。
「ねぇ、アスカ。これって…」
「大掛かりなテロだな。人質取って何する気だか」
「やっぱり攘夷浪士?」
「多分。さっきここにいた男達も刀持ってたし、動きや筋肉の付き方からしてそれなりに出来るんだろ」
「銀さん達、大丈夫かな……」
「人質取るくらいだ。簡単に傷付けたりはしないだろ」
とは言ったものの、どうすっかな。
このデパートに来たのは初めてだ。作りがどうなってるか分からない。
武器はあるから…とりあえず、奇襲をかけて人質を救出するのが先か。
「奇襲をかけるにしてもどうするの?
アスカの得意な空中戦するって言ったって、2階は高さがあるから時間掛かるよね?」
「……策が無い、ワケでもない。要は視線がどこかに集中して、隙を作れればいいんだ」
私は奇襲を掛けなきゃいけないから、視線を簡単に外せない。
なら、いるじゃないか。適任が。
「和樹、頼んだ」
「…え?僕?」
演技が上手くて動作に敏感な、天才演技が出来るヤツが。
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