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「銀ちゃーん!新八ぃー!帰ったアルよぉ〜!」
屋根の上に置かれている看板には『万事屋銀ちゃん』と書かれている。
皆…僕等は遂に主人公と会う瞬間が来たよ……。
「おかえり神楽ちゃん。あれ?そっちの人達は?」
「お、客か?」
「定春を止めてくれた恩人ヨ。お礼するために連れてきた」
うわ、うわ…!
生銀さんだ。生新八君だ…!
テンションがこういう時でも上がってしまうのは、オタク故になんだろう。
「定春を止めたぁ?どこの怪力持ちだよそりゃあ」
「銀さん失礼ですよ。あ、どうぞ座って下さい。今お茶を入れますから」
「お構い無く…」
新八君、良い子だなぁ…。
ソファに腰掛け、出されたお茶を少し啜った。
美味しい。ちょっと苦いけど。
「で、何だって?」
「定春止めたお礼がしたいネ」
「いや、別に偶々そこに居ただけで、止めると言うか…。鼻を掴んで撫でてあげただけだし…」
「でも定春大きいですよ?よくそんなこと出来ましたね」
「まぁ、ノリで?」
「あ〜……事情は分かった。んじゃ菓子折りでも持って君等の親御さんに挨拶に行くわ。家どこ?」
ギクリ。肩が上がった。
そうだ、すっかり忘れてたけど、僕等ホームレスなんだ。
家なんて無い。ここに親もいない。
元から親なんていないと同じだけど…。それを説明すると、絶対トリップしてきたことに行き着く。
嘘を吐いたら吐いたで、後々ボロが出るのが目に見えている。
どうしよう……。
「(アスカ、どうする?)」
「(和樹はどうしたい?)」
「(出来れば本当のことを話して、納得してもらいたいんだけど…どう説明すればいいかな)」
「(じゃあ私が主に喋るから、詳しいところは説明してくれ)」
「(そのまま喋るの?)」
「(実際に起きちまったことだからな。嘘吐いたって後々バレる)」
「(分かった。お願いね)」
アイコンタクトで会話をする。その間、約0.5秒。
ここでもFクラスの技術が役に立った…。
「これから話すことは、かなりファンタジーに聞こえるけど、実際に起きたことなんだ。それを頭に入れて聞いてほしい」
「…分かった」
銀さんが頷いて、アスカがゆっくりと口を開いた。
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