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「わぁああああ!!?」
な、何あの大きな犬!?
ってか犬?犬なの?犬として存在していいの!?
「そこの人!危ないから退くネ!」
後ろから犬を追い掛けて来たらしいチャイナ服の女の子が、必死に叫んでる。
このまま逃げなかったら潰される!
咄嗟にアスカの後ろに隠れた。アスカは僕の意図を読んだみたいで、抵抗もせずに立つ。
「しょうがねぇな〜。よっこい……しょ!」
アスカが掛け声を上げながら、片手で犬の鼻を掴んで止めた。
その細い腕のどこに力があるんだろう。
チャイナ服の女の子は、多少息を切らしながら僕達のところへ駆け寄って来た。
「た、助かったアル…。さっきこの公園で何か光ったらしくて、いきなり走り出しちゃって……。ありがとアル」
「どういたし、ま…して…?」
そこでようやく、ハッキリと女の子の容姿が見えた。
透けるように白い肌と青い瞳。
若干ピンクに見える朱髪を両サイドでお団子に纏めている。
この美少女は、紛れもなく……。
「あ、まだ名前言ってなかったネ!私は神楽アル!2人は?ここら辺で見ない顔アルな」
大好きな漫画、銀魂のヒロイン――神楽ちゃんその人だった。
「か、神楽ぁ!?」
「ん?私の事知ってるアルか?」
「そ、それは、この町で有名だからだよ!ここには初めて来たけど、何度か名前を聞いてたんだ。へぇ、まさかこんな可愛い女の子だと思わなかった」
「ホントアルか!?いやぁ〜、私も有名人アルなぁ!」
流石アスカ。少しどもってたけど、さらりと吐く嘘なら充分だ。
「私はアスカ。んでこっちが、」
「和樹だよ」
「アスカに和樹ネ、覚えたヨ!良い名前アルな!」
まさかの神楽ちゃんに会えるとは…。
もう半分くらい確信してるけど、一応確認しておこうかな。
「ねぇ、神楽ちゃん」
「ん?」
「ここって、どこか分かる?」
「ここ?かぶき町アルよ」
「じゃあ、あれは?」
「ターミナルって言って、天人が来るところネ」
やっぱりか!いや、確認出来たのは嬉しいけどね。
後ろでアスカが口をパクパクさせているのが分かる。そんなに動揺するの、珍しいよね。
「(……和樹さん。と言うことは間違いなく…)」
「(うん。ここは、銀魂の世界だね)」
信じたくないけど事実だ。
学園長があのゴミ箱に入れた作品は、どうやら銀魂だったらしい。
小説版でないのは確か。DVDか本か…そこが微妙なところ。
あの学園長の事だ。もしかしたら両方入れてたりして。
……有り得そうで寒気がしてきた。
「ターミナルも知らないってことは、そうとう田舎から来たアルか?」
「うぇ!?え、え〜と……」
「まぁ田舎者だろうと何だろうと、定春を止めてくれた恩は返さないとネ。今暇アルか?是非ウチに来るヨ!」
「ウチ?」
神楽ちゃんの家って言ったら、やっぱりあそこしか心当たりないんですけど。
ぐるぐる考えてるこっちに対して、原作と変わらずにこにこしてる神楽ちゃん。
うーん、どうしようかな…。
「無言は肯定と取るアル。早く行くネ!」
「わっ、ちょ…引っ張るなっての!」
「あ、待ってよアスカ!神楽ちゃん!」
まぁ、なんとかなるよね。多分。
そうだと願いたい。
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