憂鬱物語 番外編 | ナノ



「……暇だ」



読んでいた本をパタリと閉じる。

今日は思いっ切り平日だけど、先生達の会議と出張の関係で早帰り。部活も無ければ午後の授業も無く、お昼を食べての下校だった。

その結果、私は暇を持て余している。今の時刻は午後3時。遊びに行くにも中途半端で、仕方なく本を読んでいたけど…。流石に1時間も読むと飽きる。

私は一気に読むんじゃなくて、チマチマと時間を見つけて読むのが好きなのに。



「…よく晴れてるなぁ……」



テツヤは母さんと一緒に買い物だ。

私もついて行けばよかったと心底後悔してる。

このまま時間をダラダラと過ごすのも勿体無いしなぁ…。



「ストバスにでも行くか…」



ラフな私服に着替えてボールを持ち、私は外へと駈け出した。



*****



私の家の近所に、それなりに大きいストバスのコートがある。

あんまり使ってる人がいなくて穴場だが、今日は違うらしい。先客がいる。


よく焼けた真っ黒な肌と短い青の髪。

まるで生き物の様に動き回るボール。

体格の良さを引き出す彼のセンス。


結構な実力者だと思う。さっきから繰り出すのはダンクばかりで、凄い跳躍力だな、と目を奪われた。

同時に、凄くバスケが好きなんだな、って思う。

汗を流しながらシュートに一直線な姿は、全身で「バスケが大好き!」って叫んでる。

小さい頃からやってるのかなぁ。感心する。



「……おい」

「ん?」

「さっきから何だよ。集中出来ねーんだけど」

「ああ、ごめん。そんなにジロジロ見てたつもりは無かったんだけど」



コートの中にいる彼に声を掛けられた。

そのまま私もコートに入り、何回かボールをバウンドさせる。このボールは最近買ったばかりで、まだあんまり慣れない。



「…お前、バスケするのか?」

「まぁ、人並みには。あんたは?」

「俺バスケ部だし」

「マジか。私もだ」



そりゃあ上手いな。納得。



「名前は?」

「黒子朔夜」

「俺は青峰大輝だ。よし、バスケしようぜ」

「何が“よし”なのか分かんないんだけど」

「細かいこと気にすんなよ。出来んならやろうぜ」

「えぇー……」



熱いな、少年。じゃないや、青峰。

目がギラギラしてて野性的。やる気満々かよ。

青峰って人のことを、前に先輩が話していたのを聞いたことがある。

帝光中男子バスケ部1年エース。1年生でありながら1軍入りし、レギュラーの座も獲得している。

その天才的なバスケセンスは圧倒的…とか言ってた。

……少しは楽しめる、かな。



「いいよ。やろうか」

「先行は譲るぜ」

「余裕だねぇ…」



その余裕、剥がしてやろうか。

私はドリブルしながら地面を蹴った。



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