憂鬱物語 番外編 | ナノ



春。私は中学生になった。

私は女子バスケ部に所属しているが、ハッキリ言って超弱い。

勝てることはあんまり無い。男子と違って。

けど練習はするし、当然のように練習試合もある。


現在がその試合中なんだけど。


「スリーポイント!」


また相手に入れられた。第1Q、開始2分。20‐4。

因みに負けている方が私達だ。


「何をしている!オフェンスが甘い!もっと攻めろ!!」


攻めすぎて防御が手薄になってるから負けてんのに…!

ベンチで叫びまくっているのは顧問だ。疑いたいけど。


相手校は西沢中学。親友に調べてもらったけど、実力は普通。

それ以前に私のチームが弱いのだ。


「いいか!とにかく攻めろ!相手は格下だぞ!?防御より攻撃だ!!」


せっかく取ったT・O(タイムアウト)なのに、アドバイスと言えないことを言われる。

格下って。チーム的には私達より全然上だってーの。


「黒子!」

「へぁ?」

「お前が点を入れろ!動け!いいな!」

「…は〜い」


ああ、面倒だ。

いきなり名前を呼ばれれば、面倒事を押し付けられた。


「ごめんね、朔夜。役に立たない先輩で」

「いえ。そんなことないです。気にしないで下さい」


4番を背負っている人は先輩の中でちょっと経験があったぐらいの、平凡な人。

それでも小学校5年からで、他の人と1年かそこらしか変わらない。

私もそこまで出来るワケじゃない。だってバスケ始めたのは小学3年からだし。


「このメンバーの中で一番上手いのは朔夜よ。全力でサポートするから、バンバンシュート決めちゃって」

「分かりました。お願いします」


残り3分で何が出来るだろう。

そう考えていると、西沢中の、ふとした会話が耳に入った。


「あんまり強くないね、相手」

「帝光って聞いてたからコテンパンにされるかと思ってたけど…」

「強いのは男子だけなのね」

「なんかガッカリー」


誰でも分かる、嫌味。


「朔夜?」

「…いえ。主将」

「なに?」


ガッカリしてるなら、楽しませてあげるよ。

男子だけじゃないって、見せてあげるよ。


「この試合、勝ちましょう」

「…当たり前でしょ!」


私も結構、負けず嫌いだから。



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