憂鬱物語 番外編 | ナノ



ふと、気になったことを聞いてみた。



「ねえ、弟は頑張ってるかな」

「顔が分からないのだが」

「私にちょっと似てる。水色の少年だよ。三軍って言ってたけど」

「じゃあ難しいな。三軍はあまり行かないから」



やっぱりそうなのか。

どうりで、その筈だよ。だって頑固で頑張り屋な弟が今でも三軍なんておかしい。

あんなに良い才能を持ってるのに。



「アドバイスしておくけどさ。一度、私の弟に会ってみなよ。面白いから」

「…その自信はどこから出てくる?」

「女のカン、ってやつかな。でも絶対当たってる。あんた程の才能と目があれば、必ず分かるよ」



存在がレアだもん。あれは。

あんな才能は他に無い。弟だけのもの。

私も出来るけど、最初からの天然モノは珍しい。

“影の薄さ”なんて、天性の才能でしょ。



「自慢の弟は、どんなものを持っているんだ?」

「確かに身長は平均。学力は中の中。足も速くないし。シュートは……無理ね。論外。まあ、クセの所為だけど。
けど、それ以外のモノ。試合じゃ絶対に役に立つし、いる時の試合といない時の試合じゃあ全然違くなると思う。


磨けば光るよ。弟の才能も、それの味方も」

「そう思って、何故教えて鍛えない?」

「だって私が教えたって意味が無いもの。家族じゃダメ。特に私は。
他人に認められてこそ才能は開花する。自分が何をすべきか、見つけるのは自分じゃないと。
見つけたら、悩んでいたら戦う術ぐらいは教えるけど。チャンスはあんたがあげてほしい」

「僕が?」

「うん。その良い目を、うまーく使って下さいな」



話が分かる人物っぽいし、何とかなるでしょ。

まあ、行くか行かないかは任せるけどねぇ。



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