憂鬱物語 番外編 | ナノ



ボールは帝光から。5番の先輩がボールを出す。


「先輩!」


名前を呼んでボールを貰う。

そんでもって――。


「え!?」

「消えた!?」


ミスディレクション発動!

目の前にいる人をどんどん抜かしていく。


相手が私の姿を認識したのは、私がレイアップを決めた後だった。


「嘘っ」

「いつの間に!?」

「ごめんなさい。楽しみたかったら楽しんでもいいですよ」

「…?」

「けど、」


楽しむほどの余裕があれば、ね。

そう付け足すと、西沢中は顔を赤くさせて怒ったようだった。


「弱いくせに…!」


そうさ。確かに弱いよ。

男子よりは。

だけど、全員。

負けず嫌いなだけだよ。


心の中で呟いて、相手のパスをスティールした。



―――――――

―――





「ファール!黒4番!バスケットカウント、ワンスロー!」


第4Q、残り3秒。

西沢中の4番が私にプッシングをしてきた。

ファールされながらシュート入れたから、バスケットカウント貰えたからいいけど。


「朔夜、勝負どころよ」

「リバウンドは任せなさい!まあ入れるに越したことはないけど!」

「1点差だからって緊張しないでね」

「が、頑張ります」


どうしよう。私、スリースローはあんまり得意じゃない…!

しかも1点差でしょ!?

冗談じゃないよ…!


「ほら、力抜きなさい」

「主将…!」

「泣きそうな顔しないの。大丈夫だから」

「だって私、絶対落としますって…!基本レイアップかゴール下しか撃ってないんですよ!?」

「もう。しょうがないわね…」


何か案があるのか。

主将はポン、と私の肩に手を置いた。


「朔夜は、正直言って3年の私達より実力があるわ」

「それは…!」

「たかが練習試合だから、とは言わないわ。けど軽い気持ちで打ちなさい。外したってリバウンド取るから」


じゃあ、頑張ってね。

そう言って主将は自分の持ち場に行った。


――軽い気持ちで、かぁ。


「ワンスロー!」


審判にボールを渡され、回す。

ゴールを、見据えた。

緊張はもう、しなかった。





勝利を賭けたフリースロー

(放ったボールは円を通って、ネットを揺らした)

―――――――

お題元・Endless4様



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