憂鬱物語 番外編 | ナノ



そんなこんなで、かれこれ1時間程。

私は彼、青峰とずっと1on1をやっていた。


ボールと取っては点を取り、ディフェンスし、白熱し過ぎて時々ファウルみたいなことしちゃったりして。

最後の方は完全に限界を無視した点取り合戦状態だった。


こんなに動いたのは久しぶりかもしれない。

そりゃ部活行けば容赦無く走らされたりするけど、ここまで1on1に熱中したことは無い。

最近は誰も私を止められなくなっていて……つまらないと感じる時もあって。

バスケは好きだからどうしようってモヤモヤしてた。あー、発散するって大事だなぁ。

結構スッキリした気がする。



「疲れた…」

「こっちだって同じだ。ほい、スポドリ」

「ありがと」



青峰がストバスコート近くの自販機で買ったスポドリを貰い、一口飲む。

程良い甘酸っぱさが口に広がり、身体に染み込んでいく。

水分補給もすっかり忘れてて喉がカラカラだったから気持ちいい。



「これ、奢り?」

「おう。付き合ってくれたからな」

「気が利くじゃん。
今更な確認するけど…青峰って、男子バスケ部の1軍レギュラーでしょ?」

「ああ、まーな。そんなにしょっちゅう試合に出てるワケじゃねーけど。まだ1年だし」

「そりゃそうだ。1年で早々バンバカ試合に出れたら特殊だよ」

「お前はその特殊に入るんじゃね?」

「何で?」

「だってお前、黒子朔夜っつったら女子で有名じゃん。1年生で1軍レギュラー。試合には必ず出てる。先輩より上手い天才だって」

「……どんだけ盛られた話なのさ」



確かに、間違ってはいない。

実際に試合には出てるし、レギュラーであることも認めよう。

3年生がまだいるのに背番号の8番を貰っていることも。

それにはちゃんとした理由があるのだ。



「ウチは人数が少なくてね。3年生14人、1年生1人の計15人でやってる」

「2年生は?」

「いない。入部してもすぐに辞めちゃったんだってさ」



そんなに強くない帝光女子バスケ部。

それでも諦めない気持ちはどこよりも強くて、練習は結構ハードだ。

遊び半分で入部した人は次々に退部してしまった。

1年生も、4月当初は10人弱いたけど……どんどんいなくなって、遂には私1人。



「だから、もうすぐ始まる全中が最後なんだ。この学校で、女子に混ざって正当にバスケが出来るのは」



全中が終われば先輩達は引退する。幾ら嫌だと喚いても変わらない事実だ。

そしたら部員は私だけ。バスケは最低でも10人いなければ試合は出来ない。

部活的には5人以上居れば活動出来る…が、今から5人集めろなんて無理な話。

それぞれ既に部活に入っていて、兼部するにもバスケはハードスポーツ。どこかで必ず身体が壊れるだろう。

なら残されたのは……“廃部”の二文字だ。



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