憂鬱物語 番外編 | ナノ



そっと、緑間の方へ視線を向ける。


長い睫毛と大きい目と、それから……テーピング?

随分頑丈にしてるなぁ。片手の指全体に…。そうまでして指を守りたいのか?

確かにバスケは体全部が健康体じゃないと出来ないスポーツだけど、ここまで徹底しなくてもいいのでは…?



「……おい」

「ん?」

「さっきからジロジロと、何なのだよ」

「あ、ゴメン。そんなにジロジロ見てたかな」



流石に視線が痛かったかー。そりゃそうか。



「いや、大したことじゃないんだけど。テーピング、随分しっかりやってるんだなぁ、と思って。
そこまで指を大切にする人、今まで見たこと無かったし。何か理由があるの?」

「…………」

「ああ、別に言いたくなければそれでもいいよ。人間、秘密にしたいことなんて幾つもあるもんだし」



だからそんなに見つめないでほしいかな…。

無駄に目がパッチリしてると、見つめられた時ってかなり視線が痛い…。



「…俺の」

「ん?」

「俺のシュートは爪の掛かり具合が重要なのだよ。だから毎日ヤスリで削り、整え、万が一傷が付いたり欠けたりしないように、テーピングで保護している」

「へぇ。中々の徹底ぶりだね」



あの緑間の3Pは爪の掛かり具合が命なのか。

3Pを打てる範囲が広いのも、それが関係してたりするのかな。

いや、やっぱり才能?……あ、どっちもか。



「他には?何かしてたりするの?」

「…いきなり何なのだよ」

「だって気になるじゃん。緑間の高性能なシュートの秘密。
私も3P、上手くなりたいんだよねー」

「俺の記憶では、黒子も充分高性能だと思うが」

「そう?気の所為じゃない?」



確かに最近はかなり命中率上がったと思うけど。

緑間ほど距離は無い。



「で、他に何か秘訣はあるの?」

「特に何もしていない。ただ、人事を尽くしているだけだ」

「人事ぃ?それって、“人事を尽くして天命を待つ”ってヤツ?」

「ああ。俺は『まぐれ』や『頑張れば何とかなる』などというものには一切頼らない。全ての人事を尽くしていれば、必ず勝利出来るのだよ」



彼曰く、おは朝の星座占いを欠かさずチェックし、その日の蟹座のラッキーアイテムを必ず持ち歩き、例え公式戦でも試合会場までそれを持ち込んでいるらしい。

他にも毎朝の眼鏡の掛け方、バッシュの紐の結び方など、多数の験担ぎをしているらしく……。



「凄い執念だね。もしかして占い信者?それか運命論者なの?」

「馬鹿にしているのか」

「そんな気は全く。でも凄いなぁ、そこまで出来るなんて」

「当たり前だ。勝つためなら何だってする」

「けど、疲れるでしょ」



そう言ったら、緑間は目を少しだけ見開いた。




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