憂鬱物語 番外編 | ナノ



「何してるんスか?」

「ち、違うの黄瀬くん。これは、あの、その…」



何で黄瀬がここにいるの。

女子は女子で、自分達がやってきたことがバレて顔が酷いことになっている。



「俺、何も見てないッスから。このことはお互い内緒にしないッスか?あと……余計なこと、しないでくれるかな」

「…ッ、コイツが悪いのよ!!黄瀬くんの悪口言って、それで!」

「ああ、体育の時ッスか?君等には関係無いッス。変に気を使わないでいいッスよ」

「あ……」

「ま、そういうワケなんで」



早くどっか行ってくれるかな。



黄瀬は冷たく、言い放った。




*****



「はぁ……」



酷い目に合った。女の嫉妬って怖いな。

女子達は顔を真っ青にして逃げるように退散して行った。

好きな人に自分の汚いところが知られてショックだったのかは、分からないけど。

でもあの時の黄瀬の声は、私でも鳥肌が立った。



「大丈夫ッスか?」

「あー、うん。平気。だから黄瀬は早く教室に戻った方が……」

「保健室に連れて行くッス」

「は?え、いいよ。別に。自分の足で歩けるし…ッ!」



ズキン!という激しい痛み。

そうだ、足、何回も蹴られて…。捻挫かな。骨折じゃないといいけど。

痛みを自覚すると、ズルズルと壁にもたれながら座り込む。



「どうしたんスか?」

「や、何でもな…」

「……どうして、我慢するんだよ」

「へ、」

「あんだけ殴られたり蹴られたりしたら普通怖いだろ!何でこんな時にまで無駄に意地を通してるんだよ!!」



口調が、違うよ?

え、こっちが本当のキャラですか?



「何で、そんなに、強いんだよ……ッ」



そんな泣きそうな顔で、そんなことを言われても気まずいだけなんですが。

――しょうがない、付き合ってやるか。



「黄瀬」

「はい?」

「私、腰抜けたみたい。足も痛いし、歩ける状態じゃないの」

「え、あ、」

「だから、保健室まで連れてって。そんでもって、先生には秘密にして。私のことも、相手のことも。他言無用。いいね」

「は、はいッス」

「じゃあ、よろしく」



悩みを聞くぐらいなら、してあげる。

これで、貸し借り無しだ。



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