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木陰で昼寝をするために、即行で試合して。
このままサボってようと木に寄りかかって目を閉じようとしたその時。
私は話しかけられてちょっとだけ目が覚めた。いや、覚まされた。
「あの、隣、いいッスか?」
大人気モデル君に。
「……どーぞ」
「ありがとうッス。えっと、黒子さん、ッスよね?」
「そうだけど」
「さっきの試合見たッス。現役テニス部の女子にあんな点差を付けて勝つなんて、凄いッスね」
「そりゃどーも」
早く寝かしておくれモデル君…。
こちとら朝、君が登校してくれたお蔭で二度寝が邪魔されたから眠いんだよ。
「君も凄いと思うよ。対戦相手、男子テニス部でしょ」
「あー、まあ。相手も手加減してくれてたんで」
「ふーん」
んなワケ無いと思うけど。
とは言わない。けど代わりに気持ちを伝えてやろう。
「胡散臭い」
「え、」
「その顔。というより、笑顔?」
「…どういう意味ッスか?」
「そのままの意味で受け取ってもらって構わないよ。だって、ワザとでしょ?」
その笑顔も。動きも。話しかけ方も。
全部嘘っぽい。
「なん、のことだか、さっぱり……」
「本当は女子達から逃げて来たんじゃないの?こんな人目の無いところに、しかも授業中なのに抜け出してきた。
まさかとは思うけど、只単にサボりたかったから、なんて理由だったりするの?」
「そ、れは」
「君のことは何も知らない。別に、知ろうとも思わない。だから私に話しかけてきた理由が、周りの女子達と違うタイプだからっていうものだったら。
格好悪いよ、君」
悩んだものでも、プロ意識が足りてない。
只の逃げだよ。
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