憂鬱物語 番外編 | ナノ



「それともうひとつ。
何で、そんなに他人と離れて生活しているの?」

「……何のことだ」

「あんたの周りには、特定の人物以外誰もいない。大方、同じバスケ部の一軍レギュラーでしょ。同学年の。
それ以外の人物はいない。壁を作ってるって言うか…線を引いてる」



違和感があるんだよ。人との付き合い方に。

それが実は、一番気になっていた。



「顧問も。担任も。先輩も。
みーんなに線を引いて。楽しいのかな?とは思ってたんだ。
だってバスケってチームプレイでしょ?なのにそんなんでいいの?」

「別に、進んで孤立している訳じゃない。寧ろ離れて行っているのは向こうの方だ」

「あー……」



そういう、ね…。



「学力の差、技術の差。いろいろあるが、それを含めて向こう側がこちらに接触してこないだけだ。
こちらから行ったってどうにかなるものでもない。何より時間の無駄だ」



“天才”というレッテル。“何でも完璧に出来る”という縛り。

それを感じているかは知らないけど、そういうものが纏わり付くと、人は孤立していく。


“こいつは自分と違う。自分たちとは違う。レベルが、実力が。
自分のような人間が近付いたらきっと迷惑だ。”


だから放っておこうという、ある意味余計なお世話。



「困るわけでもない。要件がある時だけ近付けばいい。最低限のことしかやらない。それで十分だ」

「確かに面倒くさいよ。人間関係なんてさ。
けど、やっぱり、寂しいじゃん。理解してくれる人がいないと」



人間って一人じゃ生きられないらしいし。

殻に閉じこもってると見失っちゃうよ?いろいろ。



「正直に言うと、あんたとちょっと喋ってみたかったんだ。私も殻に閉じこもるタイプだから。あんたほど極端でもないけど。
出来ればこれからも、少しずつ話をしてくれると嬉しいねぇ」

「――そんなことを言われたのは、初めてだ」

「そう?でもいいじゃん。今日が初めて記念日で」

「朔夜」

「ん?」

「ありがとう」

「……どういたしまして」



初めてみた彼の微笑みは、

驚くほど、綺麗だった。






赤い縁の内側に侵入しないでください

(なんて寂しいこと言わないで、こっちにおいでよ)

―――――――

お題元・反転コンタクト様



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