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和樹side.



「そうか。姫路の転校か…」


アスカ達が雄二君を連れて来てくれたので合流し、現在Fクラス。
丁度雄二君にこれまでの経緯を説明し終わったところだ。


「そうなると、喫茶店の成功だけでは不十分だな」

「やっぱそう思う?」

「不十分?どうして?」


雄二君とアスカが顔を見合わせて頷く。
どうして不十分なんだろう。喫茶店が成功すれば設備が改善されると思うんだけど。


「これは私の勘だけど、瑞希の父親が転校を勧めた原因は三つだ」


そう言って、アスカは指を3本立てて見せた。
雄二君が何も言ってないところを見ると、どうやら同じ考えみたい。


「まず一つ目に、ござとみかん箱という貧相な設備。
この際ぶっちゃけるが、この設備は悪ふざけが過ぎる。幾らこの学園の教育方針だとしても、やり過ぎ感は否めない。
ただ、これは喫茶店が成功したらその利益で何とかなるだろう」


アスカの言う通り、これはちょっとアレだよね。酷いの一言に尽きる。
でも喫茶店が成功すればいいんだから、救済措置はある。問題無いだろう。雄二君呼び出したんだし。


「二つ目、老朽化した教室。
壁と窓のひび割れ、床もボロボロ、歩けばすぐに埃が立つ。つまり、健康に害がある学習環境ってことだ」

「一つ目は道具で、二つ目が教室自体ってこと?」

「流石の明久でも分かったか。その通りだ。
こればっかりは学園祭の利益じゃ難しい。教室全体の改修となると学園側の協力が必要不可欠になる。私が金を出せればいいんだけど……」

「“あの人”は喜んで出してくれるだろうけど、学校側は許可しなさそうだね」

「そこが問題なんだよねぇ」


机や椅子は僕達でも用意出来る。でも、教室の改修は業者の出入りや手続きが必要となってしまう。僕達学生がホイホイ出来ることじゃない。


「そして最後、三つ目。レベルの低いクラスメイト。瑞希の成長を促せない学習環境だ。
知っての通り、私等Fクラスは学年一のバカの集まりだ。学園のクラス分けってのは、本来同レベルの競争相手が居ることで互いに切磋琢磨し、成長を促すという目的がある。
それがこのクラスでは果てしなく難しい。瑞希のレベルはAクラス並だからな」


ただこの面に関しては、一概には言えない。
Aクラス戦での一騎打ち。瑞希ちゃんは去年まで拮抗していた相手に400点以上差を付けて圧勝していた。学力的には現在学年代表の翔子ちゃんと張り合えるぐらいに成長している。
それでも、良い学習環境とは決して言えない訳で。


「参ったね。随分と問題だらけだ」

「そうじゃな。一つ目だけならともかく、二つ目と三つ目は難しいのう」

「そうでもないさ。三つ目の方は既に姫路と島田で対策を練ってるだろう?」

「この前、瑞希に頼まれちゃったからね。『どうしても転校したくないから協力して下さい』って。
召喚大会なんて見世物にされるだけみたいで嫌だったけど、あそこまで必死に頼まれたら、ね?」


美波ちゃんの目が優しい。まるで面倒見のいいお姉さんみたいだ。


「翔子が参加するようだと優勝は難しいが、アイツはこういった行事には無関心だしな。
姫路と島田の優勝も充分に有り得るだろう」

「そうだね。2人ならきっとなんとかなるよ」


翔子ちゃんが出場するんだったら、必然的にパートナーも学力が高い子になる。
クラスメイトから選ぶとしたら優子ちゃんか愛子ちゃんとかだろう。どっちにしろ、相当苦しい戦いになる筈だ。
翔子ちゃんが無関心でよかった〜。


「本当なら姫路抜きでFクラスの生徒が優勝するのが望ましいけどな」

「それは言いっこなしだよ」

「そうだぞ。そんなモン、確率ほぼゼロだからな」

「アスカと和樹で出ればよいのではないか?」

「無茶言わないで秀吉君。僕達、知ってる人は知ってるから」

「そーそー。翔子や瑞希に目が行くお蔭で目立たないけど、Aクラスのトップ10の奴等には面割れてるし」


だからって他のメンバーだったら一回戦で負けちゃうよ、多分。


「姫路と島田が優勝したら、喫茶店の宣伝にもなるじゃろうし、一石二鳥じゃな」


秀吉君がうんうんと頷く。
僕達Fクラスは古くて汚い旧校舎にある。この宣伝の効果は決して小さくないだろう。
それに、美波ちゃんも瑞希ちゃんも花がある女の子だし。可愛い女の子が居るクラスには誰だって行きたくなるものだ。特に男子は。


「それはそうと、二つ目の問題はどうするの?」

「どうするも何も、学園長に直訴すりゃあいいだろ」


明久君の問い掛けに、さも当然の態度でアスカは言う。


「それだけ?一介の生徒でしかない僕達が学園長に言ったくらいで、動いてくれるかな」

「よく考えろ和樹。ここは一応教育機関だ。幾ら方針とは言え、生徒の健康を害する状態があるなら、改善要求は当然の権利だ。
それが例え、生徒に鉄拳制裁を容赦無くしたり、設備に差が有り過ぎたり、最早拷問の様な課題や補習を生徒にやらせても。一応は教育機関だ。一応は

「うん、凄い強調してきたね。分かり易い解説ありがとう」


もしそれで何とかなるなら、三つの問題は全部解決出来る見込みがあるってことになる。
そうすれば瑞希ちゃんは転校しなくて済むだろう。


「それなら、早速学園長に会いに行こうよ」

「そうだな。学園長室に乗り込むか」

「あ、私も行く。和樹も行こうぜ」

「え、僕もいいの?」

「もちろん。学園のトップを論破するのに、人数が多いに越したことは無いだろ?」

「島田と秀吉は学園祭の準備計画でも考えておいてくれ。それと、鉄人を見かけたら俺達はは帰ったと言っておいてくれ」


立ち上がり、すぐに指示を出す雄二君。こういうことがサラッと出来てしまう辺り、やっぱり指揮官の才能があるんだなぁと実感する。
それより、またアスカ達何かしでかしたんだね。鉄人の名前が出て来るのは、大抵3人が(本人達は至って真面目でも)バカをやった時だ。今度は何をやったんだろう。


「うむ。了解じゃ。鉄人と、ついでに霧島翔子も見かけたらそう伝えておこう」


秀吉君に翔子ちゃんの名前を出され、雄二君は言葉に詰まっていた。
……大変だね、雄二君。


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