我が道を進め! | ナノ


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アスカside.



「4対3でAクラスの勝利です」


視聴覚室になだれ込んだ私等にそう告げる高橋女史。
ああ、負けたよ。完膚無きまでに。


「……雄二、私の勝ち」


膝をつき目を瞑って顔を伏せる雄二に、翔子は歩み寄った。
でもごめんな翔子。ちょっと待ってくれ。


「……殺せ」

「良い覚悟だ、殺してやる!歯を食い縛れ!」

「Fクラス全員!何でもいいから鈍器を寄越せ!このバカげた脳みそカチ割ってくれる!」

「吉井君、落ち着いてください!」

「アスカストップ!洒落にならないって!」


明久に瑞希が後ろから抱き付き、私は和樹に羽交い絞めにされる。
くそ、離せ和樹!このバカは私が殺る!


「だいたい、53点ってなんだよ!」

「そうだ!0点なら名前の書き忘れとかも考えられるのに、この点数だと――」

「いかにも俺の全力だ」

「「この阿呆がぁーっ!」」

「うん……ごめん雄二君。僕もちょっと同意する」


ほれ見ろ!和樹が同意するなんて相当だぞ!?
記憶系科目は数日勉強しなかっただけで精度がガクンと落ちる。
相手は学年主席。しかも翔子は1回覚えたことは早々忘れないっつーチート能力持ちだ。100点は無いにしろ90点はラクに取る。
対して雄二は前も言ったように中学の頃、碌に勉強をしていない。実力の差は歴然だったにも拘らず、コイツは勉強しなかった。
これをアホと言わずなんて言うんだ!!


「アキとアスカ、落ち着きなさい!アスカはともかく、アキは30点も取れないでしょうが!」

「それについて否定はしない!」

「私は面白さ加減による!」

「それなら坂本君を責めちゃダメですよっ」

「そうだよ。僕達が雄二君に何も注意しなかったのもいけないんだから!」

「くっ、何故止めるんだ姫路さんに美波に和樹!この馬鹿には喉笛を引き裂くという体罰が必要なのに!」

「それは体罰じゃなくて処刑です!」

「安心しろ。私なら痛みも斬られた感覚も分からないまま引き裂ける。
カッターかハサミをくれ。一瞬で片付ける」

「だから洒落になんないって言ってんのに!クラスメイトを処刑するな!」


皆が身体を張って私と明久を止める。
ちょっ、待て和樹。それ拳骨だよな?そんなに拳を握り締めてどうすんだ?
そのまま振り下ろし――――ったぁ!?
若干の制裁を喰らったので、私等は一先ず雄二を狙うのをやめた。皆の優しさに救われたな雄二め。


「……でも、危なかった。雄二が所詮小学生の問題だと油断していなければ負けてた」

「言い訳はしねぇ」

「ということは図星か。やっぱ殺る」

「このバカ!」

「いったぁ!?」

「ちょっと大人しくしてて!」


鉄拳制裁、2回目。たんこぶ出来てんじゃね?これ。


「……ところで、約束」


あ、そういえば。
何でも言うことを聞くって、雄二と約束してたっけ。
もしかしてもしかしなくても、翔子はこの為だけに戦ってたんじゃないのか?


「…………!(カチャカチャカチャ!)」


流石は康太、準備が早ぇ!
こうしちゃいられない。私も撮影準備に入らねば。


「分かってる、何でも言え」

「……それじゃ――」


翔子は一度瑞希に視線を送り、再び雄二に戻す。
その目はどこか熱っぽく、まるで恋する女の子…………恋する女の子?
え、ひょっとして翔子の思惑って。
困惑する私を他所に(多分見えてない)翔子は小さく息を吸って、


「……雄二、私と付き合って」


言い放った。
…………えー。


「やっぱりな。お前、まだ諦めてなかったのか」

「……私は諦めない。ずっと、雄二のことが好き」


教室の空気が凍り付く。ま、そりゃそうだ。
翔子は噂じゃ同性愛者になってるし。まさかFクラス代表が好きと誰が思うよ。
私と和樹は中学時代に惚気話を色々聞いてたから、苦笑しか出来ない。


「まだ好きだったんだね、翔子ちゃん」

「幼馴染だしな。しかし一途だねぇ翔子も。他に良い奴一杯いるのに」

「それだけ雄二君のことが大好きなんだよ」


翔子が同性にしか興味ないって噂は、ひたすら一途に雄二を思っていた結果。
瑞希を見ていたのは、雄二の近くにいる異性が気になったから。
私と和樹は無論除外されている。人の恋路は全力で冷やかすか応援はするが、恨みを買おうとまではしない。
翔子がどうかは分からんが、恋する乙女に恨まれると恐いし。


「拒否権は?」

「……無い。約束だから。今からデートに行く」

「ぐぁっ!放せ!やっぱりこの約束は無かったことに――」

「駄目。……アスカ、和樹」

「んー?」

「な、何かな?」

「……また、雄二の情報教えて。いろんなこと、聞きたいから」

「おう、ネタが入ったら教えるよ」

「ちょっと待てアスカ、お前は何を知ってる。和樹まで何をして――――」

「……雄二、行くよ」

「待て!俺は2人に聞きたいことがあるんだっ!」

「……デートの時間が惜しいから」


雄二の首根っこを掴んだ翔子は、そのまま教室を出て行った。
教室に暫しの沈黙が流れる。
皆が皆呆然としてて、開いた口が塞がらないってのはこういうことを言うんだろうなと学んだくらいだ。



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