我が道を進め! | ナノ


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和樹side.



「では、両名共準備は良いですか?」


Aクラス担任であり学年主任の高橋先生が立会人を務める中、僕達の最後の戦争が始まろうとしていた。
う…。僕、高橋先生苦手なんだよね。あの知的で若干鋭い目が怖い。


「ああ」

「……問題無い」


最後の試召戦争は、ここ、Aクラスで行われる。
広いし頑丈だから、明久君とアスカが多少暴れても問題無いし。何より、あんなボロボロの教室だと格好つかないもんね。


「それでは一人目の方、どうぞ」

「あたしから行くよっ」

「ワシがやろう」


Aクラスからは優子ちゃんが、Fクラスからはその弟の秀吉君が出ることに。
双子対決かぁ…。もしかしたら、お互いの集中を乱す方法とか知ってるかもしれない。
優子ちゃんはAクラスの中でも特に頭が良い10人の内の1人。苦手教科なんてある筈無いから、どう動くかが鍵になる。


「ところでさ、秀吉」

「何じゃ?姉上」

「Cクラスの小山さんって知ってる?」

「はて、誰じゃ?」


……ん?
小山さんって確かCクラス代表の…。あの根本君と付き合ってる人じゃなかったっけ。


「じゃあ、アスカ」

「な、ななななな何だ?」

「アスカは知ってる?小山さん」

「し、Cクラスの代表でBクラス代表と付き合ってるくらいしか情報は持ってないデス」

「…………アスカ、本当に?」

「ハイ、ホントデス。私ハ何モ知リマセン」


何故に片言!?
汗をダラダラとかき、優子ちゃんの刺さる様な視線から必死に逃げるアスカ。
その姿に納得と言うか、妥協した感じで「ふーん」と優子ちゃんは言うと、秀吉君に振り返った。


「ま、アスカはいいわ。秀吉はこっち来なさい」

「うん?ワシを廊下に連れ出してどうするんじゃ姉上?」


そのまま廊下に行ってしまった。
な、何か嫌なフラグが立った気がするのは気の所為でしょうか…。


「(アスカ何したの?)」

「(…CクラスがAクラスに敵意を向けるように、この間ちょっと情報操作的なものを……)」

「(情報操作?)」

「(秀吉が優子に変装して、宣戦布告をしたことがあっただろ?その時、手っ取り早く敵意を向けさせる為に小山を罵倒しまくったんだよ)」

「(それってまさか)」


『姉上、勝負は――どうしてワシの腕を掴む?』

『アンタ、Cクラスで何してくれたのかしら?どうしてアタシがCクラスの人達を豚呼ばわりしていることになっているのかなぁ?』

『はっはっは。それはじゃな、姉上の本性をワシなりに推測して――あ、姉上っ!ちがっ……!その関節はそっちには曲がらなっ……!』


僕とアスカが話していたら、聞こえてきた優子ちゃんと秀吉君の会話。
秀吉君の悲痛な叫びが響いたと思ったら、扉を開けて優子ちゃんが再び教室に入って来た。
……返り血をハンカチで拭き取りながら。


「秀吉は急用が出来たから帰るってさっ。代わりの人を出してくれる?」

「い、いや…。ウチの不戦敗でいい……」


賢明な判断だと思うよ雄二君。
これは僕でも口元が引きつるから。


「そうですか。それではまずAクラスが一勝、と」


Aクラス
木下優子  生命活動
WIN
    VS
Fクラス
木下秀吉  DEAD


いや、まだ死んでないです。…たぶん。


「では、次の方どうぞ」

「私が出ます。科目は物理でお願いします」


Aクラスからは佐藤美穂さんという人が出るらしい。
こっちからは誰が…?


「よし。頼んだぞ、明久」

「え、僕!?」

「おお、行って来い明久!」

「ちょ、アスカまで何言ってんの!?」


明久君は、その……ちょっと頭が弱い。だからクラスを代表して戦うなんて予想してなかったんだと思う。
そんな明久君の肩を豪快に叩きながら、雄二君とアスカは不敵に笑う。


「大丈夫だ、俺達はお前を信じてる」

「大丈夫だって。お前なら」


自身満々に言う2人に、明久君は溜息を一つ。


「ふぅ……。やれやれ、僕に本気を出せってこと?」

「ああ。もう隠さなくてもいいだろう。この場にいる全員に、お前の本気を見せてやれ」


周りのFクラスメンバーが騒ぎ出す。
そうだよね。今までの明久君を見てたら、不思議に思うのも当然。
僕もそう思ってるし。


「吉井君…貴方、まさか……」

「あれ、気付いた?ご名答。今までの僕は全然本気なんか出しちゃあいない」

「それじゃ、貴方は…!」

「そうさ。君の想像通りだよ。今まで隠してきたけれど、実は僕――」


大きく息を吸い、明久君は皆に告げた。


「――左利きなんだ」


【物理】

Aクラス
佐藤美穂  389点
    VS
Fクラス
吉井明久  62点


まぁ、そんなことだろうとは思ったよ。


「このバカ!テストの点数に利き腕は関係無いでしょうが!」

「み、美波!フィードバックで痛んでるのに、更に殴るのは勘弁して!」


佐藤さんと明久君の点差は6倍以上。
幾ら明久君が召喚獣の扱いに慣れていたとしても勝てる相手じゃない。
もっと言うと、明久君は理数科目が苦手だからね…。


「よし、勝負はこれからだ」

「そうだな。まだ始まったばかりだ。ここから巻き返せばいい」

「ちょっと待った雄二、アスカ!アンタ等、僕を全然信用してなかったでしょう!」

「「信用?何ソレ?食えんの?」」


本気を出したらしい左腕で殴ろうとしてた明久君を止めるのは大変でした。



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