我が道を進め! | ナノ


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「一騎打ち?」

「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎打ちを申し込む」


毎度恒例となった宣戦布告。対応しているAクラスの生徒は秀吉の双子の姉、優子だ。
今回はちょっとマジになってることもあり、クラス代表である雄二、明久、瑞希、秀吉、康太、和樹、私とFクラスの核となるメンバーで来ていた。
ぶっちゃけると、私はただ翔子とか優子に会いに来たんだがな!ああ、もう優子可愛い!


「うーん、何が狙いなの?」

「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」


怪しんでるな、優子。まぁ当然だ。
幾ら今までの試召戦争で勝ち続けてると言えど、私等が下位クラスなのは変わらない。そんな私等が学年トップの翔子に一騎打ちを挑むこと自体が不自然だし、無茶極まりないんだから。
裏があるとか考えてるんだろうなぁ…。ああ、優子可愛い…!


「ちょっとアスカ、心の声がダダ漏れ」

「あ、わり」


和樹に指摘されて謝る。
いっけね、今回は真面目なんだった。


「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることが出来るのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを冒す必要も無いかな」

「賢明だな。……ところで、Cクラスの連中との試召戦争はどうだった?」


雄二が腕を組みながら訊く。
ここまでは雄二の予想通り。ここからが本番だ。


「時間は取られたけど、それだけだったよ?何の問題も無し」


まんまと私等の作戦に引っ掛かり、秀吉の挑発に乗ったCクラスは昨日の内にAクラスに攻め込んだ。
しかし結果は目に見えていて、半日で決着がつき、現在CクラスはDクラスと同等の設備で授業を受けている。ハッ、ざまぁ小山。Fクラスをバカにした罰だ。


「Bクラスとやり合う気はあるか?」

「Bクラスって…昨日来ていた“あの”……」

「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」

「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、3ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争は出来ない筈だよね?」


試召戦争の決まりの一つ、準備期間。
戦争で負けたクラスは3ヶ月の準備期間を経ない限り自ら戦争を起こすことは出来ない。
これは戦争で負けたクラスがまたすぐに再戦を申し込んで、戦争が泥沼化するのを防ぐ為にある。


「優子ー。実情は置いといて、対外的にはあの戦争『和平交渉にて終結』ってなってんだよ」

「残念ながら、規約的には何の問題も無いんだよ。……Bクラスだけじゃなくて、Dクラスも、ね」

「…アスカ、和樹」

「やっほー。相変わらず可愛いな」

「褒め言葉ありがとう。
……ねぇ、坂本君。それって脅迫?」

「人聞きが悪い。ただのお願いだよ」


……こうしてやってると、雄二が悪役に見える。
根本のクソと同じっぽいな…。いや、止めとこう。流石にそれは嫌だ、私が。


「うーん……分かったよ。何を企んでるのか知らないけど、代表が負けるなんて…一部を除いて有り得ないからね。その提案受けるよ」

「優子ちゃん、その一部って何?」

「貴女達のことよ。和樹とアスカ」


そんなに実力が認められていたなんて意外だ。結構嬉しい。
でも、そんなあっさり決めていいのか?と訊けば、「だってあんな格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」と肩を震わせて心底嫌そうに優子は言った。
そういえば、あのクソは女子制服着て話をしに行ったんだっけ?0.05mmくらいは役に立つじゃん、クソでも。


「でも、こっちからも提案。代表同士の一騎打ちじゃなくて、そうだね…。お互い7人ずつ選んで、一騎打ち7回で4回勝った方が勝ち、っていうのなら受けてもいいよ」

「う、流石優子ちゃん」

「成程。こっちから姫路が出て来るのを警戒してるんだな?」

「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が体調悪くて姫路さんが絶好調だったら、問題次第では万が一があるかもしれないし。
それに、そっちにはアスカと和樹がいるでしょ。その2人だけは特別だからね」


瑞希を軽く見てるワケでも、私と和樹を過大評価してるワケでもない。
優子は冷静に物事を判断して動く技術に長けてる。的外れなことを言ってるんじゃない。それほどまでに、翔子は頭がズバ抜けて良いんだ。


「安心してくれ。うちからは俺が出る」

「無理だよ。その言葉を鵜呑みには出来ない。これは競争じゃなくて戦争だからね」

「そうか。それなら、その条件を呑んでも良い」

「ホント?嬉しいな♪」

「けど、勝負する内容はこちらで決めさせてもらう。それくらいのハンデがあってもいい筈だ」


ホントに交渉とか人を動かすのが得意だよな、お前は。
点数で敵わない私等に科目の選択権は必須だ。けど一騎打ちの上科目を決めさせろ、なんて虫の良い話が通るワケがない。だからこその7人制だろう。


「え?うーん……」


クラス代表代理として私等と交渉してる優子はまた悩み始める。
この会話で味方の運命を左右する、と言っても過言じゃないからな。慎重にもなるか。

ここでふと、懐かしく可愛い女の子の気配を感じた。
その方向へ視線を向けると同時に、女の子は静かに声を発する。


「……受けてもいい」

「ぅわっ!」

「わぁ!?」


明久が盛大に驚き、それに反応して和樹も驚いた。
気配も無くただ静かに、凛とした姿を持つ私の友達の1人、霧島翔子。
このAクラスの代表だ。


「……雄二の提案を受けてもいい」

「あれ?代表。いいの?」

「……その変わり、条件がある」


翔子はまず雄二を見て、その後私と和樹に微笑み、瑞希の方へ視線を移した。
まるで値踏みをするかの様にじっくりと観察している。当の観察されている本人は不思議そうな顔をしているが。
そして、雄二に向けて言い放つ。


「……負けた方は何でも一つ言うことを聞く」


こ、これは…!瑞希の貞操の危機か!?
もしそうなったら即座にデジカメとビデオカメラを用意して一部始終を撮らなければ!それから康太に撮影を頼んで…。


「…………(カチャカチャ)」

「ムッツリーニ、まだ撮影の準備は早いよ!と言うか、負ける気満々じゃないか!」

「ナイス康太!もし撮れたら私にもくれ!」

「……写真1枚500円。映像は700円」

「くっ、高いな…。いいだろう。その腕に期待するぞ!」

「……任せておけ。最高の作品を提供する」

「こらアスカ何してんの!」

「止めるな和樹……。これは、私等の戦いなんだ!」

「まだ始まってないし動機が不純過ぎる!!」


くそ、このままじゃ一部の所為で士気が下がってしまう。私もその手に乗ってしまった。
まさかこれも計算の内だったりするのか?恐ろしいな翔子。流石は学年主席だ。


「じゃ、こうしよう?勝負内容は7つの内4つはそっちで決めさせてあげる。3つはうちで決めさせて?」


優子からの妥協案。やっぱり全部は無理か。


「(姫路さん、どうする?)」

「(え?何がですか?)」

「(瑞希、ちゃんと考えた方がいいぞ。もし負けたら瑞希が……)」

「(何のことだか分からないですけど、きっと大丈夫です)」

「(駄目だよ瑞希ちゃん!そんな簡単に…)」

「(和樹の言う通りだよ。いい?もし負けちゃったら、姫路さんは霧島さんに――)」

「交渉成立だな」

「おいコラ待てや雄二」


まだ瑞希に了承を得てないぞゴルァ。


「心配するな。絶対に姫路に迷惑はかけない」

「…かけたらお前、引っこ抜くからな」

「何をだ!?」


何って、ナニに決まってんだろ。
ここで放送禁止用語を流すワケにはいかねぇんだから察しやがれ。
しかし、えらく自信満々だな雄二のヤツ。勝利を確信してるってことかねぇ。
ナメてかかんなきゃいいけど。


「……勝負はいつ?」

「そうだな。10時からでいいか?」

「……分かった」

「よし。一旦教室に戻るぞ」

「そうだね。皆にも報告しないといけないし」

「じゃーなー優子、翔子」

「また後でね」

「……待ってる」

「バイバイ」


交渉を終わらせてFクラスへと戻る。
下剋上から始まった私等の試召戦争の終結は、もうそこまで迫っている。
私の相手、誰だろう。



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