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和樹side.



「明久、アスカ。随分と思い切った行動に出たのう」

「痛いよう痛いよう…」

「ほらアスカ、手を出して」

「うぅ…。流石に痛かった……」

「なんとも…お主等らしい作戦じゃったな」

「で、でしょ?もっと褒めて!」

「後先考えず自分を追い詰める男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」

「秀吉…それ、遠回しに馬鹿って言ってない?」


まさか壁を壊すなんていう行動に出るなんて……無茶やらかすんだから。
アスカの綺麗な手は血が滲んでしまっていてかなり痛々しい。
元々肌白いから余計に目立つ。
アスカに救急箱を出してもらって、湿布と包帯を巻いた。


「はい、出来たよ。後で医者に診てもらおうね」

「え、別に平気だこれくらい」

「…………ちゃんと診てもらった方がいい」

「康太君、お疲れ様」

「…………和樹も、お疲れ」

「これくらい放っておけば治るって」

「…………折れてるかもしれないだろう」

「フィードバック遮断機があるからそんなに大怪我してない――」

「…………いいから、診てもらえ」

「えー…。分かったよ、帰りにな」


アスカは変なところで面倒くさがりっていうか、自分のことあんまり意識しないんだよね。
怪我しててもケロッとしてて。危なっかしいし。
それも、今回は僕の所為でもあるんだよね…。後で謝ろう。


「でも、壁を壊すとかもうやらないでよ。もしかしたら留年や退学になっちゃうかもしれないんだから」

「それは困る!」

「ま、今回はよくやったな。流石観察処分者だ」

「嬉しいけど、微妙な心境だよ」


雄二君が明久君の肩を叩いて、アスカの頭を撫でている。
まるでお父さんみたいだね、雄二君。
あ、“お父さん”という単語に過剰反応してしまう訳じゃないから、別に大丈夫です。


「さて。それじゃ嬉し恥ずかしの戦後対談といくか。
な、負け組代表?」


床に座り込んでいる根本君。
負け組代表かー……。ちょっとかわいそうかも。


「本来なら設備を明け渡してもらい、お前等に素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」


その言葉に、周りがざわめき出した。
ここまで頑張ったんだし、本当は教室を入れ替えたいけど…。


「落ち着けお前等。前にも言ったろ?
Bクラスはあくまで通過点。本来の目的はAクラスだ。ここじゃない」

「アスカの言う通りだ。だから……分かってるよな?」

「…条件は何だ」


根本君のその言葉に、アスカと雄二君がニヤリと笑う。
この笑い方をする時って、大抵悪いこと考えてるんだよね、この二人。


「条件?決まってんだろ。お前だ負け組代表」

「…俺だと?」

「おう。お前には好き勝手やってもらったし」

「正直去年から目障りだったんだ」

「しかも私の忠告を無視しやがったしー」


酷い言われようだけど、事実彼はそれだけのことをやっている。
アスカの忠告っていうのは分からないけど、きっと癇に障ることをしてしまったんだろう。
僕も瑞希ちゃんも被害者だし。今回は本当に油断しました…。


「そこでお前等Bクラスにチャンスだ。
Aクラスに試召戦争の準備が出来ていると宣言して来い。そうすれば今回は設備は見逃してやる。
ただし、宣戦布告ではなく戦争の意志と準備があるとだけ伝えるんだ」

「…それだけでいいのか?」

「ああ」


そこで、不意に雄二君が指パッチンを鳴らす。
アスカが「はいよっ」と言って四次元ハンカチから何かを取り出した。


「Bクラス代表がコレを来て今言った通りにしてくれたらな」


取り出したのは、女子制服。
これって、Cクラスを挑発する時に秀吉君が着て行った…?
まだ持ってたんだ、アスカ……。


「ば、バカなことを言うな!!この俺がそんなふざけたことを…ッ!」

「Bクラス全員で必ず実行させよう!」

「任せて!必ずやらせるから!」

「それだけで教室を守れるならやらない手は無いな!!」


おおう、即答。
根本君は今まで一体どんなことをやってきたんだろう。


「んじゃ、決定だな」

「くっやめろ!よっ寄るな!!離せ変たぐふぅッ!!

「お前に拒否権はねーよ」

「うわ、鳩尾……。痛そう…」


容赦無いなぁアスカ。
よっぽど根本君に腹が立ってるみたい。

着替えは雄二君が明久君に任せた。
けど段取りとか、着せ方が分からないみたい。
そりゃそうだよね、男子が女子の制服のこと分かってたら逆に気持ち悪いし。


「私はどっちの着方も知ってるけど?」

「心の中読まないで!って、着たことあるの?」

「何回か。雄二のとか、明久のとか、康太のとか」

「何でそんなに多いの…。しかも人の…」

「さぁ?あ、明久。そのポケットに入ってる携帯取って」

「はい」


ポケットから取り出されたのは小さな携帯。試召戦争の時に、根本君が持ってたヤツだ。
中には、父さんの電話番号が入ってて――……。
駄目だ、考えたら気持ち悪くなってきた。


「やっぱりあれはスペアだったか。こいつ何個携帯持ってんだよ。今日もスペア入ってるし。
……ほら和樹」

「何?」

「番号、消したから。スペアもキチンと」

「うん、ありがとう」


これで安心かな。よかった。
心配することも無くなったし、医者に診せに行かないと。


「アスカ、医者行くよ」

「うぇ。そーでした。雄二ー明久ー、私等帰るなー」

「おう、お疲れ」

「またね、アスカ、和樹」

「うん。また明日」


よし。それじゃあ。
目指すは保健室だね。



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