我が道を進め! | ナノ


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「ドアと壁を上手く使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!!」


Cクラスを挑発し、Bクラス戦が始まった。
さっき聞いたが、昨日中断されたBクラス前から進軍を開始するらしい。
雄二は『敵を教室に閉じ込めろ』って言ってたけど。

一見、順調に見えるこの状況。
実はかなりの問題が起こっていた。


「和樹、大丈夫か?」

「う、うん……」

「姫路さんも。体調悪い?」

「え、あ、あの……ごめんなさい…」


和樹と瑞希の様子がおかしい。


「勝負は極力単教科で挑むのじゃ!補給も念入りに行え!」

「無理するなよ!危なくなったら仲間を頼れ!」


総司令官の筈の瑞希が指示を出さない。それどころか、参加もしないなんて。
和樹も、時々召喚しようとしてるが、すぐに止めてしまう。
今は秀吉と私の指揮でなんとかやってるけど…。
一体何があったんだ?


「左側が押し出されそうになっています!」

「文系が大量に出て来ました!誰か応援を!」


ヤバイ、Bクラスは文系が多いからこのままだと戦況が危なくなる。
ただでさえ戦力差が激しいってのに…!


「だぁああ!ちまちまウザイ!」


【古文】

Bクラス
3名  平均145点
    VS
Fクラス
神凪アスカ  533点


今はこんな感じで潰していってるけどキリがない。
一人倒せば新しいのが出て来てまた倒して……の繰り返しだ。


「和樹、援護出来るか?」

「ふぇ、あ、…っ」

「姫路さん!増援を!」

「あ、そ、その…!」


相変わらず和樹と瑞希は動かない。挙動不審に首を振るだけだ。
マズイ、このままじゃ突破される…!


「明久!」

「了解!!」


明久が私の指示で古文の担当教師へ近付く。
そして耳元で囁いた。


「先生、ズラ…ずれてますよ」

「ッ!しょ、少々席を外します!」


よし。今の内に戦況を立て直そう。
まさか“教師脅し術〜古文編〜”をここで使えるとは思わなかった。
ホントに応急措置だけど、使わないよりマシだ。


「和樹、瑞希、どうした?様子がおかしいぞ」

「っ!」

「何かあったの?」


明らかに様子が変なのに、未だに隠そうとする2人。
まぁバレバレなんだけどな。そうまでして隠したいこと……しかもこの状況下で何があるんだ?


「そ、その、何でもないですっ」

「嘘吐くな。絶対何かあっただろ」

「ほ、本当に何も無いって!」


嘘吐くの苦手だな2人共。
若干涙で潤んでる。


「右側出入り口、教科が現国に変更!!」

「数学教師はどうした!?」

「Bクラス内に拉致された模様!」

「私が行きますっ」

「僕も……、っあ、」


一瞬、瑞希と和樹が行こうとしたが、すぐに顔を俯かせた。
今、何かを見て止めたように見えたけど…。何かあったか?

目線を辿れば、姑息ヤロー(根本)が目に入った。
またアイツ?でも今はこれと言って何も仕掛けられて無い筈だけど。
そう思いながら、目を凝らす。すると、姑息ヤローが何かを持って見せ付けているのが分かった。
あれは手紙と…ケータイ?


(あれはまさか、予備?それとも前に壊したのはダミーだった?)


いや、どっちでも同じだ。
そういうことか、姑息ヤロー。

何の変哲も無い只の手紙とケータイ。
けど恐らく、あれが2人に関係してるのは確かだ。手紙の方は分からないけど、ケータイは分かる。
あの中には、まだ和樹の父親の電話番号が入ってるんだ。


「――明久、見えたか?」

「うん、バッチリ」


道理でおかしいと思った。
悪名高いアイツが、タダで私達と対等な協定を持ち込む筈が無い。
その時にはもう瑞希と和樹を無力化させる算段が立っていた。
ノーリスクハイリターン。実に合理的。あのヤロー、頭は良いみたいだな。
Fクラスの戦力は限られてる。多分、私も無力化させたかったんだろうけど…残念だったな。
その手には乗らない様に、私物は全部四次元ハンカチに入れてるんだ。


「…瑞希、和樹。一度下がれ」

「アスカ……」

「そうだよ。具合が悪いなら戦線から離れてて。
試召戦争はこれで終わりじゃないから、体調には気を付けて」

「…はい」

「そんじゃ、私等は行くな。秀吉、ここは任せた」

「うむ、任された」

「早く行こう、アスカ」

「おう」

「あ…!」


何か言いたげだったけど、無視。
ごめんな。大事な用だから。


「なぁ明久。お前、面白いこと考えてるだろ」

「アスカこそ。凄いこと企ててるでしょ?」

「いやぁ、あんなの見せられたらなぁ」

「だよね、やってくれるよね根本君」

「まったく、面白いなアイツ」


あははは。と笑いながら会話をする。が、私も、勿論明久も、目は笑っていない。
人が折角忠告してやったっていうのに。バカな奴だ。

あの野郎ブチ殺す。



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