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アスカside.
「今から昨日言っていた作戦を実行する!」
次の日。
開戦時間から30分前になったところで、雄二がそんなことを言い出した。
「作戦?」
「ああ。Cクラスのな」
「それで何すんの?」
「秀吉にコイツを着てもらう」
袋から取り出したのは、制服。
只の制服じゃない。女子制服だ。
……何があったんだ?
「別に構わんがそれでどうするんじゃ?」
「いいの!?秀吉君!」
「女子制服なんて人間一回は着るものじゃ。何度か部活で着ておるし…」
「えええ!?」
「和樹、落ち着け。
…秀吉には『木下優子』として、Aクラスの使者を装ってもらう」
秀吉にはAクラスに双子の姉がいる。
秀吉と瓜二つで、違うところは成績と話し方くらいだ。
あとメッチャ可愛い。
「という訳で秀吉、用意してくれ」
「う、うむ…」
そんなワケでお着替え開始。
女子なら目を背ける場面なんだろうけど、無理。
胸のトキメキが抑えられない。
横を見たら康太が写真を撮ってた。後で売ってもらおう。
「よし。着替え終わったぞい。…ん?どうしたんじゃ?」
「き、気にしないで秀吉君!ちょっと興奮しちゃっただけだから!」
とか言って和樹も顔赤いじゃん。
そう言ったら首をブンブン振って否定してきた。
分かりやすいなぁ。
「それじゃCクラスに行くぞ」
「うむ」
「あっ、僕も行くよ!アスカ達は?」
「私はついてく。面白そうだし」
「僕は待ってるよ。気を付けてね」
*****
「――さて。ここからは済まないが一人で頼むぞ秀吉」
「気が進まんのぅ…」
確かに、相手を騙しに行こうとしてるからな。
抵抗があって当然か。
「そこを何とか頼む」
「むぅ…仕方ないのぅ…」
「悪いな。
とにかくあいつ等を挑発してAクラスに敵意を向けさせてくれ。
演劇部のホープのお前なら出来る筈だ」
「ここで応援してっから。頑張れ♪」
「アスカは楽しんでおるじゃろ。
はぁ…。あまり期待せんでくれよ……」
溜息を吐きながら秀吉はCクラスに向かって行った。
「本当に大丈夫?別の作戦を考えておいた方が…」
「多分大丈夫だろう」
「心配すんな。秀吉は上手くやるさ」
「心配だなぁ…」
「シッ!秀吉が教室に入るぞ」
秀吉は深呼吸をして、大きく扉を開け放った。
「『静かにしなさいッ、この薄汚い豚ども!!』」
「……うわぁ」
「さっすが秀吉!やるぅ♪」
いきなりの豚発言。
これは相手も頭に来るだろ。挑発も得意なんだな、秀吉。
「なッ何よアンタ!?」
「『話掛けないでッ!豚臭いわッ!!』」
「アンタAクラスの木下よね!?
ちょっと点数良いからっていい気になってるんじゃないわよ!何の用よッ!!」
「『ふんっ…。
私はね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!
貴女達なんて豚小屋で充分だわッ!!』」
「なッ!!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?」
おいおい小山ぁ。
Fクラスとは言ってないぞ。
「『手が汚れるのがすごく嫌だけど、薄汚い貴女達を相応しい教室に送ってあげるわ。
覚悟しておきなさい。近いうちに始末してあげるわ!』」
――秀吉がスッキリとした顔で戻ってきた。
うん、こっちとしてもかなり楽しかった。
「これで良かったかのぅ?」
「ああ。素晴らしい仕事だった」
CクラスではAクラス戦の準備に取り掛かっている。
こっちのことはスルーされるみたいだ。
「作戦も上手くいったことだし。俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ!」
「うん!」
さて。ここからが本番だ!
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