我が道を進め! | ナノ


▼ 5

アスカside.



「Fクラス代表の坂本雄二だ。このクラスの代表は?」


教室を開けると、そこにはかなりの人数が残っていた。
戦争の準備をしているとは言え、妙じゃね?この人数。


「私だけど、何か用かしら?」


出て来たのは、代表の…あ、小山とか言ったっけ。


「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間はあるか?」

「クラス間交渉?ふぅん……」


雄二の言葉を聞いた小山が、イヤらしい表情に変わる。
私の勘が告げた。
コイツ、何か仕掛けてやがんな。


「ああ。不可侵条約を結びたい」

「不可侵条約ねぇ……。どうしようかしらね、根本クン?」


「当然却下。だって、必要ないだろ?」


小山が声を掛けた相手は、Bクラスの代表・根本だった。


「なっ!?根本君!Bクラスの君がどうしてこんなところに!」

「酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて。試召戦争に関する行為を一切禁止したよな?」

「何を言って――」

「先に協定破ったのはソッチだからな?これはお互い様、だよな!」


根本の指示に合わせて、Bクラスの奴等が私達を囲んだ。
背後にいるのは、数学の長谷川先生。


「長谷川先生!Bクラス芳野が召喚を――」

「させるか!Fクラス須川が受けて立つ!試獣召喚サモン!」


ナイス須川!お前見直した!
けどその場凌ぎだな。元々点数が削られている須川に勝ち目は無い。


「僕等は協定違反なんてしていない!これはCクラスとFクラスの――」

「無駄だ明久!根本は条文の『試召戦争に関する一切の行為』を盾にしらを切るに決まっている!」

「ま、そゆこと♪」

「屁理屈だ!」

「屁理屈も理屈の内ってな」

「和樹!私等もやるぞ!」

「うん!」

「おーっと、いいのかい?日向サン?」


ニヤニヤと笑う根本。何を隠してんだコイツ。


「…どういう意味?」

「俺等相手に戦っていいのかって聞いてるんだ」

「何言ってんだテメェ。和樹が戦えない理由はどこにも無いぞ」

「これを見ても、同じ台詞が言えるかな?」


取り出したのは携帯だ。
根本はそれを操作し、一つの電話番号を見せた。
その番号に、私は見覚えがある。


「――ッ!」

「日向サンはこの番号の意味、分かるよな?」

「あ、ぁあ……っ」


和樹の体が震え出す。
私は思いっ切り奥歯を噛み締めた。


「お父さんにここが知られるのは嫌だよなぁ?」

「とう、さ…ん……」


和樹の父親の携帯番号。

和樹は9歳の頃、ワケあって私が父親のところから連れて来た子供だ。
それ以来、ずっと私の家で育ててきた。
けど和樹は父親がトラウマになってしまった。名前を出しただけでも泣き出してしまう。

根本はそれを調べた上でやっている。
どこまで腐ってんだコイツ。


「テメェ、その番号をどこで知りやがった」

「秘密。さぁこれで戦力は半分になった。今だ!坂本を打ち取れ!!」


捕まえて拷問とか尋問したいが、今は全員逃がすことが優先か。
私は和樹の体を揺らして、声を掛ける。


「おい和樹、しっかりしろ。大丈夫だ」

「ぅあ、っアスカ……!」

「ここにアイツはいない。平気だ。今は雄二たちと逃げろ。いいな?
康太、和樹を頼んでいいか?」

「(コクリ)分かった」

「雄二、皆を連れて離脱しろ。これじゃ分が悪い」

「1人で平気か?」

「私を誰だと思ってやがる。ザコに負けてやるほど甘くねぇよ」

「…………分かった。行くぞ明久!」

「アスカだけでいいの!?」

「今ここで雄二がやられる方が問題だ!私は気にしないで行け!!」


まずは味方を逃がす。4人くらい後を追ったけど、あんだけ人数がいれば上手く撒けるだろ。
まぁ、もっとも――。

パンパンッ!


「!!」

「4人以上仲間のところに行かせる気は無いぜ」


エアガンをドアに向かって撃つ。
それに怯んで、Bクラスは動きを止めた。


「言うじゃないか不良が。お前に出来るのは物を壊すぐらいだろ?」

「正面からまともに戦えないヤツに言われたくねぇよ」

「ッ、お前等!このバカを殺せ!!」


根本の声で一斉に召喚が行われる。
ちょっと挑発すればすぐに激情しやがったなコイツ。
そんな単純じゃ、指揮官にはなれねぇぞ姑息ヤロー。
Bクラスになんなくて良かった。


試獣召喚サモン


二丁の銃を持つ、デフォルメされた私が召喚される。
それにより私の点数が表示された。


【数学】

Bクラス 
20名  平均157点
    VS
Fクラス 
神凪アスカ  437点


「ザコは下がれ」


1人につき10発ずつ撃ち込む。
悪いが私は根本に用があるからな。構ってやれる時間は無い。


「さて、片付いたぞ」

「クソッ、化け物め……!」

「最高の褒め言葉だな」


笑いながら根本の持つ携帯を奪い、和樹の父親の番号をメモリーカードに至るまで消去した。
メモ機能まで使われていたが、消してしまえば関係無いな。


「あんまり調子に乗らねぇ方が身の為だぜ?根本クンよぉ」

「き、貴様のようなバカに、俺が負ける訳――」

「そうじゃなくて」


ヒュンッ


「次、私の仲間に何かしてみろ。


      お前の首と体を離れさせちゃうぜ☆」


持っていたカッターで根本を斬らず、背後の窓ガラスだけを斬った。
殺気も出てるし、これで力の差は分かるよなぁ?


「……ッ」

「じゃーなー」


斬った窓ガラスから外に飛び降りる。
和樹、大丈夫かな。



prev / next

5 / 6

[ Back ]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -