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「まず、日向和樹!」
「え?僕?」
あ、そっか!和樹がいる!
和樹も結構な実力者だった!
それ以外にも実は一つ、秘密にしていることがあるんだけどね。
「こいつの別名を知っているか?」
「別名?」
「有名なのか?」
「ああ。恐らくここにいる男子全員は知っているだろう。
教えてやる。こいつの別名は、『風音 詩翠(カザネ シスイ)』だ」
その瞬間、和樹は立ち上がり、くたりと俯いた。
そして、スイッチが入る。
「ククク……ハハハハハハ!!」
笑い声が出る。普通の和樹ではありえない雰囲気で。声色で。
「どうした?頭が高いぞ!跪け!!」
「こ、この声は…!」
「我こそが、七色の声を持つと言われる“風音詩翠”の本当の姿、日向和樹だ!
さあ、皆の者よ。我が力の前にひれ伏すがいいわ!!」
『は!アルカディス様!』
「ア、アルカディス様…?」
「和樹は本名や姿を隠して声優・歌手として活動してて、“シークレット・詩翠”って言われてるんだ。結構有名なんだよ」
「今のは和樹が声優としての代表作、“魔法少女リーネ”っていう深夜アニメの主人公の親友・アルカディスの台詞のパクリだね。流石本物は違うわ〜」
アルカディス、愛称はアルカって言われる彼女の声を担当した和樹は、すっごく有名になって、一時期はライブとか新しいアニメとかで引っ張りだこになったのを覚えている。
因みに、私も熱狂なファンの一人だ。
「フフフフ。まさかこんなに早くバレるとは思わなかったがな。流石は雄二だ」
「相変わらずスイッチが入るとすごい人格の代わり用だな。
もういいぞ。戻ってくれ」
「ふん。精々好きに使うがいいわ」
――カクンッ!
「ふえ。いきなりスイッチ入れないでよ〜」
「悪かったな。それよりも、もう一人のジョーカーだが」
「そっか。まだいたのよね。一体誰なの?」
「誰もがよく知る人物で、たぶん、この学園の中で一番有名な人物だ」
「有名…?」
「本当に誰なのじゃ?」
「まあ慌てるな。その人物は――――」
雄二はゆっくりと指を、ある一点に向けて、指名した。
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