我が道を進め! | ナノ


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アスカside.



最低クラスであるFクラスが他のクラスに宣戦布告する。
それは、あまりにも無謀だろう。


「勝てるわけがない」

「これ以上設備を落とされるのは嫌だ」

「姫路さんがいたら何もいらない」


おいコラ。誰だ瑞希にサラリとラブコール発言した奴。
まあ、ともかく。文句が上がるのも無理はない。

文月学園のテストには上限がない。
1時間以内であれば能力次第で好きなだけ問題を解けて、それで得た点数が召喚獣の強さになる。
新学期早々、振り分け試験での点数しか持っていない私達にとって、これは不利だ。
なんせ、元からのスペックが違いすぎる。Aクラスなら3桁の点数なんてザラだけど、Fクラスでは精々2桁。もしくはそれ以下。例え1対3でも勝てないだろう。
だけど我が悪友は、無駄なことは一切しない。
だからこそ、信頼しているんだけど。


「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺達が勝たせてみせる」


雄二は自信満々に言った。


「何を馬鹿なことを」

「できるわけないだろう」

「何の根拠があってそんなことを」

「根拠ならあるぞ。それを今から説明してやる」


不敵な笑みを浮かばせて、雄二はある人物を見下ろした。


「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

「………!!(ブンブン)」

「は、はわっ」

「流石康太!グッジョブ!」


思いっきりやっていながら、必死に左右に首を振る康太。
今更遅いぞ!


「土屋康太。こいつはあの有名な、寡黙なる性職者(ムッツリーニ)だ」

「……………!!(ブンブン)」


ムッツリーニという言葉にほぼ全員が反応する。
そりゃあ康太有名だよな。商会を立ち上げている程だし。

ムッツリーニとは、男子には畏怖と畏敬、女子には軽蔑をもって挙げられる、康太の二つ名のこと。
元ネタは勿論、ムッツリスケベから来てる。
康太は私も尊敬する程の徹底的な裏方役の能力を持っている。


「ムッツリーニだと……?」

「馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?」

「だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……」

「ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……」

「あの、その土屋君の名前って…?」

「み、瑞希ちゃんは純粋なままでいてね!」

「? 分からないけど、分かりました」


ナイス和樹。これで瑞希の純粋さは守られた。


「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」

「えっ?わ、私ですか?」

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」


そりゃ元々Aクラス並の頭脳の持ち主だからねぇ。


「そうだ。俺達には姫路さんがいるんだった」

「彼女ならAクラスにも引けをとらない」

「ああ。彼女さえいれば何もいらないな」

「おいそこ!さっきから瑞希にラブコールを送ってる奴は誰だ!」


瑞希を含む可愛い系女子は私のものだぞ!


「木下秀吉だっている」

「秀吉君は演劇部のホープだからね!」

「当然俺も全力を尽くす」


流石は雄二。さっきまで自由過ぎるクラスメイトを一瞬で纏め上げた。
こういうのってやっぱりいるんだよねぇ。人の上に立つ器を持ってるって感じの。


「それに、吉井明久だっている」


シーン……。
明久の名前を出しただけで、士気が氷点下まで下がった。


「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!全くそんな必要はないよね!」

「誰だよ、吉井明久って」

「聞いたことないぞ」

「ホラ!折角上がりかけてた士気に陰りが見えてるし!
僕は雄二たちとは違って普通の人間なんだから、普通の扱いを――って、なんで僕を睨むの?士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」

「そうか。知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは“観察処分者”だ!!」

「あ〜あ、言っちゃった」


観察処分者、それは、はっきり言ってしまえば――


「バカなヤツに付けられるっていう代名詞か?」


その通り。バカの代名詞だ。しかも只のバカじゃない。超バカの代名詞。


「ち、ちがうよ!ちょっとお茶目な生徒につけられる愛称で・・・」

「いかにもバカの代名詞だ!」

「そこは否定する所だよね雄二!?」

「あのう・・・観察処分者って、どういうものなんですか?」


あれ?瑞希知らないの?


「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかの雑用を特例として物に触れるようになった召喚獣でこなすんだ」


普通の召喚獣は物に触れない。そういった点ではすっごく便利なんだけど、そうもいかない。
召喚獣の負担の何割かは生徒にフィードバックされるし、他の生徒と同じで教師の監視下でしか召喚できない。特にメリットが無いんだよね〜。


「それって、非戦闘員がいるってことか?」

「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」

「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」

「それだけじゃない。俺達には、切り札があるからな」

「大胆に無視しないでよ!
って、切り札?そんなのがあったの?」

「ああ。結構な有名人だ」


アララ?何それ?
予想外の展開に少々驚いておるのですが。
このクラスにそれ以上の逸材なんかいたかぁ?



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