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丁度先生も戻ってきたところで、教室に戻り席に着いた。
「さて、それでは自己紹介の続きをお願いします」
壊れた教卓を替えて(けどところどころ壊れてる)、気を取り直してHRが再開された。
「えー、須川亮です。趣味は――」
特に何もない、自己紹介が進んだ。
「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」
「了解」
先生に呼ばれて、雄二が立ち上がる。
代表だからか、雄二は前に立って、皆を見下ろした形で自己紹介を始めた。
クラス代表というのは、別に、そのクラスで一番良い成績を出した生徒っていうだけ。
Fクラスでトップでも何の自慢にもならないけど。
「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きな風に呼んでくれ」
「ロリコン&バカ大将!」
ビィイイイン!!
その瞬間、狙ったように私が座る席の卓袱台にカッターが刺さった。しかもド真ん中。
こいつ、どんだけ命中率いいんだよ!
「次は当てるぞ」
「ごめんなさい」
瞬時に土下座しました。
好きなように呼べって言うから呼んだのに、理不尽だなこいつは!
「まぁいい。さて、皆に一つ聞きたい」
クラス全員の視線が雄二に向いた。
雄二はゆっくりと教室を見渡し、設備を確認する。
「かび臭い教室。古く汚れた座布団。薄汚れた卓袱台。
Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが――」
一拍おいて、冷静に言った。
「――不満はないか?」
『大ありじゃあ!!』
正にFクラスの魂の叫びだった。
「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」
「そうだそうだ!」
「いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!」
「そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大きすぎる!」
次々に漏れ出す文句の数々。ごもっともな意見ばっかりだ。
「みんなの意見はもっともだ。そこで」
クラスメイトの反応に満足したように顔を上げ、そしていつも以上に自信満々に笑った。
「これはクラス代表としての提案だが――
FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
雄二は高らかに、今年最初の戦争の引き金を引いたのだった。
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