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和樹side.
Fクラスに行く途中、Aクラスを覗いた。
……本当にここは高校でしょうか。
パソコンにエアコン、小さな冷蔵庫が各席に備え付けられていて、黒板の代わりに大きなディスプレイがあった。
けど僕が行くのはFクラス!
きっと良い仲間達が歓迎してくれる!
そう思って思いっきりFクラスの扉を開けた。
「すいませんっ、少し遅れちゃいました!」
「早く座れオタク」
「オタクって言わないでっ!今オタクはポジティブな単語として使われているんだから!!」
いきなり罵倒された。
ヒドくないですか!?
「って、なんで雄二君が前に立っているの?」
僕をオタクと言ったのは、悪友の坂本雄二君だった。
「先生が遅れているらしいから、代わりに教壇に上がってみた」
「もしかして雄二君がFクラスの代表?」
「ああ、そうだ」
荒れそうだな、このクラス…。
「これでこのクラスの全員が俺の兵隊だな」
かわいそうだ。とても。
見なかったことにしよう、うん。
「朝から賑やかじゃのう」
「あ、おはよう!秀吉君」
大きな瞳、綺麗な髪、真っ白な肌。
木下秀吉君は男の子なんだけど、女の僕より全然可愛い容姿をしている。
もう男の娘だよね!
「秀吉君も一緒なんだ!宜しくね!」
「うむ。こちらこそ宜しく頼むぞい」
結構知り合いがいて素直に嬉しい。
可愛い秀吉君を見てそう思った。
「ところで和樹。お前、どうしてFクラスいるんだ?」
「え?」
「そう言われればそうじゃのう…。
お主ならAクラスなんて余裕じゃろう?」
雄二君の言葉に、秀吉君も首を傾げた。
うーん。どうして、と言われても…。
「こっちの方が断然面白いと思ったし、なにより、“あの子”がFクラスに行くって言うから、僕も英語以外の教科を名無しで提出しただけだよ?」
「“あの子”って、まさか」
「雄二君が考えていることは、たぶん、当たってると思うよ」
僕等が言っている“あの子”。
自由で、バカで、いやもうとことんバカで、フォローのしようがなくて、僕と一緒でオタクな子。
明るくてポジティブ。彼女は雄二君や秀吉君とも友達なのだ。
「そうか。あいつが…」
「今年は荒れそうじゃのう」
「う〜ん。否定できない…」
―――ガラッ
……その時、教室のドアを開ける音が大きく響いた。
それと同時に―――
「すいません!ちょっと遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れこのウジ虫野郎」
罵倒酷くなってる!!
「教室に入っていきなり罵倒されたっ!?」
本当、僕もびっくりだよ……。しかも僕と同じこと思ってるし。
この子、吉井明久君も友達。優しくて仲間思いなんだ。
「あれ?和樹、なんでここにいるの?」
「あ〜。話せば長いよ。とにかく、僕も“あの子”も一緒だから。宜しくね、明久君」
「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」
挨拶をしていると、覇気のない声が背後から聞こえてきた。
振り返ってみてみると、そこにはよれよれのシャツを着て、寝癖すら直していない無造作すぎる髪形をした冴えないおじさんがいた。
この人が担任かぁ。
とりあえず、僕等はホームルームの為に一度席に着いたのだった。
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