携帯獣とカラフルな道! | ナノ


 3

「ピチュー、“でんこうせっか”!」



先制したのは、アスカだ。
目にも留まらぬ速さでハブネークと呼ばれた蛇の懐に飛び込み体当たりした。
しかし大したダメージは無いようで、ふらつく程度だが。
…どうするつもりだ?



「あら、その程度?小賢しいわねぇ」

「黙れよオバサン。小皺が増えるぞ」

「何ですって!?」

「ハッ。動揺するって事は自覚あるんじゃねーか。ザマァ」

「美しさの〈う〉の字も知らない小娘が…!ハブネーク、“ポイズンテール”!」

「プルッ、プルッ!」

「“アイアンテール”で向かい打て!!」

『おっりゃあ!』



ピチューの尻尾が銀色に変わり、毒々しい色を纏ったハブネークの尻尾と対峙する。
体格的にはピチューの方が負けている筈だが、実力的には互角のようなのだよ。



「さて、向こうも盛り上がっている。こちらも始めようか」

「一応言っておきますが、ダブルバトルですよ」

「知ってるさ。だが、基本的には1on1の方がいいだろう」

「…いいでしょう。イーブイ、“めざめるパワー”!」

「ニドキング、こちらも“めざめるパワー”だ」



カズキと男は同じ技を選択。
身体の周りに透明な球体が幾つも現れ、お互いに飛ばし合い相殺された。



「“にどげり”だ」

「“あなをほる”で避けて!」

『うんっ』



あのイーブイは穴を掘れるのか。掘るスピードが速い過ぎる気がするが。



「ほう。地面タイプの技で大きさに対抗しようというのか」

「…さあ、それはどうでしょうか」

「甘いな。確かに地面タイプは効果抜群だが、イーブイ程度の威力が効く訳がない」

「言った筈ですよ。これは、ダブルバトルだと」

「プルルッ!?」



イーブイが攻撃したのはニドキングではなく……アスカと対峙している、ハブネーク。
攻撃を受けて飛び上がり、地面に落ちた。ダメージは大きいと思われる。
女がギリ、と歯軋りをした。



「小癪な真似を…っ」

「イーブイ、エーフィに進化!」

『了解です!』



イーブイはカズキの指示を受けて光に包まれる。
次に見えた姿はイーブイではなく、薄い紫色の毛並みを持ち額に赤い宝石を付けたポケモンだった。



「チッ。ニドキング、エーフィに“メガホーン”だ」

「させるか!ピチュー“守る”!」

「ありがとアスカ!エーフィ、“サイケこうせん”」

「ハブネーク“あくのはどう”!」

『はぁああ!』

「プップル!」



不思議な光と禍々しいエネルギーがぶつかり合い、激しい爆発音が鳴り響く。
土煙が起こって周りが見えないのだよ…。



「す、凄いねバトルって」

「激し過ぎて爆発起こってるっス!」

「ですが、これではお互いに視界が遮られてしまうのでは…?」


「――“だいちのちから”」



黒子の心配を余所に、アスカの声が凛と響く。
うっすらと見えるのは、爆風と土煙の中でピチューが技を繰り出し、相手のポケモンの近くで火が噴射されているというもの。
その攻撃で、相手のポケモンはどちらも倒れた。
どうやら、決着がついたらしい。どちらにせよ、相手のポケモンは戦闘続行が出来ないのだよ。



「くっ…」

「ハブネークもニドキングも、共通する弱点は地面タイプ!ピチューが電気タイプだからって油断したな」

「イーブイの唯一の弱点である格闘タイプを覚えているのはよかったですが、残念でしたね。僕のイーブイが普通じゃないって事、知らない訳じゃないでしょう?」

「本当にムカつく小娘ね…そのピチューも、イーブイも」

「どうする?まだやるか?」

「…止めておく。ここで本気を出してもいいが、まだ時じゃないからな」

「どういう意味ですか」



男は微笑しながらポケモンをボールに仕舞い、言う。



「我々だけではない。他の仲間達も集合し、この世界を統べる」

「はぁ!?」

「世界各地のポケモン達も、みーんなこの世界に迷い込むかもねぇ。ポケモンが知られていないこの世界で、ポケモンが大量発生したら…どうなるか、分かるでしょう?」

「そして神々さえもこの地に呼び起こし、再びテンガン山の光景を復活させる」

「そんな事させません。意地でも阻止してやります」

「フン、やれるものならやってみなさい。それから……」

「ッ、エーフィ“リフレクター”!」



女が目線を移動させ、腰からボールを出したと思ったら、凄い勢いで此方に何かが突っ込んで来た。
それに反応したカズキはエーフィに指示して、エーフィは俺達の前で半透明の壁を作り出す。
壁越しに見えたのは大きな翼とくちばしを持った鳥。
俺達の存在に気付いていた…!?



「隠れていたようだけど、無駄ねぇ。これでも気配には敏感な方なのよ」

「この世界の人間がポケモントレーナーになったか。中々興味深い。是非研究対象にさせてほしいくらいだ」

「遠慮しておこう」



赤司が堂々と前に出て、アチャモをボールから出した。
それに続く様に、俺達も草むらから出る。



「お前等、バトル派手過ぎだろ。何してんだよ」

「ガラ!」

「派手なのは大ちゃんもでしょ?ガングロだし」

「ピィ」

「黒いのはカンケーねぇだろ」

「青峰君が黒いのは今更なので置いといて。そこの奇抜なファッションセンスを持った貴方達はどうしますか?」

「ユッキ?」

「この人数を相手にするのは骨が折れると思うッスよ。まだ戦うんなら、相手するッスけど」

「エレキッ!」

「大人しく捕まってよー。女の子を虐めると大変な事になるんだからねー」

「モシモシ」

「そういう訳だ。投降するかやられるか、好きな方を選べ」

「チャモチャモ!」

「おいお前等。まだトレーナーになってちょっとしか経ってないのに、コイツ等相手にバトルは…!」

「ふふ。活きの良いガキ共だこと」



顎に手を付けて怪しく笑う女は、俺達を見渡すと同時に肩を竦めた。
何が言いたいのだよ。



「手持ちはそれなりに高価なポケモンなのに、まだ新米のヒヨッコトレーナーじゃあ宝の持ち腐れねぇ」

「それは、やってみないと分からないだろう?」

「…最近のガキは、本当に口の利き方がなってないわ。アンタ達程度の実力で、アタシに勝てるとでも?」

「一旦引くぞ、ヴィーナス。幾ら雑魚だからと言ってもポケモンの体力の無駄だ」

「分かってるわ」



男は翼が葉で出来たポケモンを出しそれに跨った。
女も鳥ポケモンの背中に乗って大空へと上がって行く。



「力量云々以前の話ねぇ。知識も経験も浅過ぎる。正直、やっても面白くないわ」

「相手にするだけ時間の無駄。もう少し実力を付けてから相手してやる」

「あ゛!?」

「いいからさっさと消えて下さいアカギさん狂信者。僕とアスカが攻撃する前に」

「言われなくても。精々頑張りなさいガキ共」



そう言って笑って、あいつ等はあっという間に見えなくなった。



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