携帯獣とカラフルな道! | ナノ

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基礎練習をして、ミニゲームをやりつつ、休憩。
休憩の度に上を見ると、2人が笑って手を振ってきた。

…あいつ等といるのは、少し居心地が良い。
キセキの世代やら天才やら色々言われているが、周りはそれを当然だと思い、当たり前の様に接してくる。
しかし俺達は人事を尽くすことでその実力を付けてきたのだよ。決していい加減にやって生まれた物ではない。
それを分かろうとせず、努力に目を向けず、勝手に期待して失敗すれば失望する…。吐き気がする程汚い。
しかしあの2人は純粋に俺達と接し、努力にも目を向けてくれる。
恐らく、自分達もトレーナーとして沢山の経験を積み、成長してきたからだろう。
だから簡単に信じられたのかもしれない。ポケモンの存在もあいつ等の事も。



「どうしたの?ミドリン」

「…いや」

「アスカさんとカズキさんの事を考えていたでしょう」

「なっ!?何故分かったのだよ!」

「カマを掛けてみたら見事に引っ掛かりましたね」

「……後で覚えておけよ、黒子」

「遠慮します」



この、無駄に影が薄い無表情人は何を考えているか分からん。
自分は無表情のくせに他人の表情を見分けるのは得意という、迷惑極まりない奴なのだよ。



「…あの2人は、周りと違うと思ってな」

「違うって、どういう意味で?」

「接し方が違うのだよ」

「ああ、確かにそうですね。色々素直ですし。アスカさんは特に」

「思った事をすぐに口に出せちゃうタイプだよね。カズキちゃんも、人と分かり合おうと熱心だったり」

「あいつ等は俺達を天才だと言われているのを知らないからかもしれない。だが、少し…気が楽なのだよ」



2人といると自分のペースを崩される。
思わず自然体になってしまう。
それがポケモンと接してきたあいつ等の力、なのかもしれない。
少し頬が緩んだ、その時だった。


――ゾワリ


一瞬だけ、背筋に駆け巡る寒気。嫌な汗が吹き出し、鳥肌が立つ。
目の前にいる桃井と黒子も、それを感じたのか顔が青ざめている。
何だ、これは。



「…緑間君、桃井さん」

「うん…。なんだか、痛い視線が飛んで来たよ…」

「鳥肌が収まらないのだよ…」



アスカ達はどうだろうか、と思い上を見る。が、そこには誰もいなかった。
跡形もなく消えている。可笑しい、さっきまで確かにいた筈だ。
もしかして、テレポートか?



「全員、一旦自主練だ!レギュラーと桃井はついて来い!」



赤司が声を張り上げて、迷いも無く体育館を出ようとしている。
俺達もそれに続き、2人を捜す為に駈け出した。



*****



案外遠くには行っていなかったようで、見つけたのは校舎の裏庭だった。
見つからないように物陰に隠れ、様子を窺う。
アスカとカズキは不機嫌オーラを惜しげもなく晒し出し、対峙する人物達を睨みつけていた。



「……誰でしょうか、あの人達」

「コスプレしてるイタイ人みたいッスね」



黄瀬が言う通り、確かにコスプレに見える。
白い服に黒タイツで、胸のところにGと書かれている服。
まるで宇宙人なのだよ。



「男の人も女の人も、顔が良いから尚更変に見えるね」

「あの胸にでっかく書いてあるGって何かなー?ゴ○ブリ?」

「汚いのだよ紫原」

「五月蝿いぞそこ。気付かれてしまうだろう」



赤司の声で口論を止め、もう一度状況を見渡す。
すると、アスカが心底嫌そうに口を開いた。



「どういうつもりだ。何でお前等がここにいるんだよ」

「随分な物言いねぇ。アンタ達の所為で巻き込まれたっていうのに」

「先にやらかしたのはそっちでしょう。赤い鎖なんか使うからバチが当たったんですよ。
いい加減諦めてくれませんか?しつこいのは嫌いなんです」

「こっちの台詞だ。こちらの計画をことごとく潰してくれていて迷惑なんだが」

「ポケモンを道具としか見ないで世界をどうこうしようとしてる奴等を黙って見てろってか?出来ねぇ相談だな。
んで、この世界で何が目的なんだよ。まさかとは思うけど、ここでも悪名を轟かせようっての?」

「察しが良いじゃないの。この世界、ポケモンが全くいないんでしょう?
まずどこか広い場所を焼け野原にして、全世界にその様子を流す。アタシ達がやりましたって言えば、簡単にこの世界にギンガ団の名が広まるわ。良い考えだと思わない?」

「それか、この世界の戦争している地域を吹き飛ばすのもいいな。両成敗という事で感謝されるかもしれない」



男と女から発せられた内容に、耳を疑った。
醜悪に笑いながら至極普通に話す奴等に背筋が凍る。

焼け野原、だと?

こいつ等はそんな簡単にやってしまうのか。そんな大事を。



「そんな事をしたらどれだけの人が死んでしまうか、分かって言ってるんですか?」

「勿論だ。ギンガ団の恐怖を植え込ませ、アカギ様に献上する。きっとお喜びになるだろうな」

「全てはアカギ様が目指す世界の為に。小さな犠牲くらい仕方ないでしょう」

「ふざけんな。どっちかと言えばこの世界にお邪魔してんのは私等の方だ。これ以上迷惑かけられるかよ」

「なら、やる事は一つだな」



男の言葉に、アスカとカズキは距離を取った。



「行くぜピチュー!全力でぶっ飛ばす!」

『オーライ!』

「お願いね、イーブイ」

『うん!』

「ハブネーク、小娘共を叩き潰しなさい!」

「行け、ニドキング」



女が出したのは巨大な蛇。男は大きな尻尾を持つ怪獣の様なポケモン。
これから起こるのがポケモンバトル、か。
アスカが本気になって熱く解説してくるものがどんなものなのか、少し興味を持った。



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