携帯獣とカラフルな道! | ナノ

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「そういえば、アスカっちとカズキっちは何処に住む予定なんスか?」

「住む場所?」

「暫くはこっちにいるんスよね?衣食住はどうすんスか?」

「……考えてなかったね」



そこは盲点だったねぇ。
涼太君の言う通り、暫くはこっちにいるんだ。
着る物と住む場所はともかく…食べ物は困る。バッグの中には木の実と飲み物とポケモンフーズしか入ってないし。



「いや、住む場所も大切ッスよ!?」

「わっ。びっくりした〜。涼太君、心の中を読まないでよ」

「全部声に出てるッス!!」

「……本当?」

「ホントッス」

「Really?」

「アスカさん、発音良いですね」

「まーな。んで、住む場所の事はなんとかなるだろ。どーせ野宿だし」

「野宿ぅ!?」

「んだよ大輝。文句あんのか?」

「有り過ぎだ!野宿って、どこでする気だよ!」

「どこでって、そこら辺で」

「バカかお前等!?」

「なんか大輝にバカって言われると腹立つ!」

「落ち着けお馬鹿!
それで、何が駄目なの?野宿楽しいよ?」



野宿してるとポケモン達と一緒に寝てる感じがするし、珍しいポケモンと会える事もあるし、星が綺麗だったり、風の音が聞こえて子守唄になったり……。
案外楽しい事の方が多い。
トレーナーの中には「ちゃんとポケモンセンターで休めないと嫌」って人もいるけど。僕等は全然平気だもん。



「お前達は、向こうで野宿をしていたのか?」

「ちゃんと家はあるぞ。けど旅してるとどーしてもなー」

「ポケモンセンターって言う、病院とホテルが合わさった様な施設が有れば泊まるけど…。殆ど野宿の方が多いねぇ」

「この世界では野宿をしている人なんて極少数なのだよ。ましてや年頃の女子がやったら警察沙汰だ」

「うっそぉ。もったいない!」

「僕等は毎日家に帰って寝るんです。旅とかする人はあまりいませんから」

「そうなんだ…。どうしよう。家無いよ」

「お金は有るか?」

「お金ねぇ……。有るには有るぞ」



アスカは財布を取り出して見せる。
すると、周りの皆は固まった。
え、どこか可笑しいところあった?



「アスカちん、それ凄いね〜。幾らくらい持ち歩いてるのー?」

「最近使ってないから詳しくは分かんねぇけど…。確か、70万くらい?」

「な、ななななな70万スか!?」

「お金持ちだねー……」

「そうなのか?こんぐらいじゃね?」

「普通はこんなに持たねぇ!っつか持てねぇよ!!」

「どうしたらこんなに稼げるんですか?僕等、同い年ですよね?」

「僕もアスカも13歳…今年で14歳だから、同い年だね。
稼ぎ方と言われても、別に働いてる訳じゃないよ?ただ、バトルすると少しずつ溜まっていくって言うか…」

「トレーナーとバトルして、勝つとお金が貰えるんだよ」

「トレーナーから?」

「うーん、厳密に言うと違う。そういう機関からお金が降りて来る仕組みっぽい。あんまり意識してねぇから、詳しくは分からんが」

「それより、このお金…使えるかな?」

「無理だな。日本通貨じゃない。見た目や種類は同じだが、絵柄が違う」



征十郎君が財布からお金を出して、見せてくれた。
この世界の日本と言う国のお金は、小銭とお札の2種類がある。これは同じ。
でも、お札には人が、小銭には植物とか何処かの建物が描かれている。
僕等のお金は、お札にはポケモン、小銭もポケモンと建物が描かれている。
やっぱり、似てるようで違うんだ。色々と。



『じゃあ、見事に一文無しってワケね』

『どうします〜?』

「なら、俺の家に来るか?」

「征十郎の家?迷惑じゃないか?」

「そんな事ないさ。俺の家はそれなりに大きいし、部屋くらい貸せる。
それに、俺の家に居れば皆が集まり易いだろう」

「そうなの?」

「一応、赤司っちの家は知ってるッス」

「部活関係で結構お邪魔してるから」

「それじゃあ……お願いします」

「よろしくな!!」

「分かった。部屋を手配しよう」

「赤司、家族には……」

「どうにかするさ。どっちにしろ、アチャモを飼うんだからな」

「そうか」



これで家は確保、だね。
そしたら、アスカがウズウズしながら征十郎君に尋ねた。



「なぁ、征十郎の家ってデカい庭有る?」

「ああ。バスケが出来るくらいは有るぞ」

「バトルが出来るぞカズキ!!」

「始まった……」



アスカのバトル症候群が…。
見て分かる通り、アスカはバトルが大好きだ。そりゃあもう、馬鹿って言われるくらいに。
ポケモンに乱暴するのが好きなんじゃなくて、唯単純に、トレーナーとポケモンの絆を感じられて熱くなれるバトルが好き過ぎるだけ。
旅をしてた時だって、トレーナーを見つけたら即バトルしていた。
比例する様にアスカの手持ちポケモン達もバトルが好きなんだよねぇ。
アスカが好きっていうのもあるけど。



『アスカ、あんまりワガママはダメ』

「ピチューもしたいだろ?」

『否定はしない!』

「だろ!?新しくトレーナーになったヤツがこ〜んなにいるのに、何にも無しってのはヒドくね!?」

「落ち着けバトル馬鹿」

『本当にアスカちゃんはバトル好きですね〜』

「バトルって、そこまで楽しいのか?」

「お?大輝はバトルに興味があるのか?」

「アスカがポケモンの他にそこまで熱中してるなんて、ちょっと興味出てきた」

「俺も!どんなものなのか知りたいッス!!」



どんどん毒されてく人がいる…。
僕が溜息を吐いたのを見て、イーブイは苦笑いしている。



「いいか!バトルってのはトレーナーの知恵と知恵、ポケモンの技と技、そして両方の意地と意地のぶつかり合いだ!
お互いの熱意が集まり、戦っているトレーナーやポケモンは勿論、観客の人達も興奮するんだよ!」

「お!なんかバスケみたいだな!」

「似てるところは有るかもな!だから好きなんだよポケモンバトル!」

「しかし、やるなら週末だ」

「「「えぇー!?」」」

「文句を言うな」

「何で!?」

「この後、俺とアスカとカズキは帰って親に説明をしないといけない。お前達だってそうだろう?」

「うっ!そうだった…」

「大丈夫だよアスカちゃん。週末と言っても、今日が水曜日だから2日後だし」

「そんなに待たないよー」

「…分かった。我慢する」

「そうしてください」

「じゃあ、今日はこのまま解散にしよう。明後日の土曜日は部活が午後までだから、終わり次第僕の家に集合だ」

「「「了解」」」



敬礼する皆を見て、やっぱり征十郎君ってリーダーなんだなぁって思った。



*****



ところ変わって征十郎の家
見た時ビックリしたよ。大き過ぎでしょこの家。
周りの民家はそうでもないのに、赤司家だけ規模が違う。
特に庭なんて、本当にバトルが出来そうだった。外から見るよりもずっと大きくて…コンテストも出来そうだなぁ。

…コンテストが恋しい。

お姉ちゃん達に会いたいし、ミクリさんとコンテストバトルしたいし、ナタネさんやメリッサさんとお茶会して盛り上がりたいし。
こっちに来たばっかりで、さっきアスカに「バトル馬鹿」って言ったりしたのに…。これじゃ人の事言えないな。



「これから母にお前達の事を言って部屋を貸してもらうように説明する。2人はあまり会話に参加するなよ。特にアスカ。ややこしくするな」

「失礼なヤツだな。それくらいの空気は読むさ」

「その言葉、信じるぞ」



ごめんね征十郎君。出来るだけ、アスカの口は僕が塞ぐから。
そう心に決めて意気込んでいると、奥からスリッパの足音が聞こえてきた。
足取りからして女性。その予想は的中し、見えたのは物腰の柔らかそうな人だった。
長い髪をふわりと揺らして現れたその人はとても優しそう。
征十郎君のお姉さん、かな。



「お帰りなさい征君。あら、そちらの女の子達は?」

「ただいま帰りました。この2人は少し複雑な事情があり、この家の部屋を貸し出したいのですが」

「構わないわ。征君が連れて来たなら悪い子達ではないでしょう。お泊り、ということかしら?」

「はい。出来れば俺の部屋の近くがいいのですが…」

「すぐに用意させましょう。…ところで、お名前を窺ってもいいかしら?」

「は、はい」



優しい顔で微笑まれて、思わず女性なのにドキッとしてしまう。
あ、赤司家って皆顔が整っていらっしゃるのでしょうか…!



「初めまして、カズキと申します」

「アスカです。征十郎君には先程とてもお世話をして頂き、しかも衣食住を提供して頂けるとの事で……。なんと感謝を申し上げれば良いか」

「あらあら、随分しっかりした子達ね。そんなに堅苦しい喋り方じゃなくて、素で話してくれていいわよ。
私は美代といいます。征君の母です。宜しくね」

「母ぁ!?マジですか!?」

「うっそぉ…!?あ、えっと……お若いんですね」

「ふふ。有難う」



いや、本当に若過ぎますよ!?
どこからどう見てもお姉さんにしか見えないのですが…!
どうなってるんだ赤司家。怖いよ赤司家。



「そうだ。今、丁度柊也さんが帰って来ていて、もうすぐお食事の時間なの。そこで説明をしたらどうかしら」

「父さんが?…分かりました。一度着替えて、ダイニングに向かいます。
アスカ、カズキ。先に行っていてくれ。すぐに追いつく」

「おう、りょーかい」



「じゃあ行きましょうか」と美代さんが言って、それについて行く。
途中、凄い高そうな壺とか絵が飾られていて、触らないようと変に緊張してしまったのは仕方がないと思う。



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