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「――俺は信じるぞ」
冷たい空気を壊す様に赤司が口を開いた。
「え、ウソ。マジで?」
「何だ、今まで話したのは嘘か?」
「いやいやいや!事実です!
でも…そんな簡単に言い切れる事じゃないし」
「確かに、かなりファンタジーな話だが……お前達の目は、嘘を言っている目じゃない」
その通りだ。
アスカとカズキ、2人共ポケモンに対する気持ちや姿勢は真っ直ぐで、真剣そのもの。
俺達がバスケに掛ける熱意と同じものを感じた。
「俺も、信じるぜ」
「大輝…」
「だって、俺コイツ気に入ったし」
「ガラガラ!」
青いヒレがついたポケモンを撫でれば、擦り寄って来て可愛い。
コイツ等はここにいる。なら、本物だ。
他の奴等も全員が信じると口をそろえて言った。
「サンキューな」
「ありがとう!」
コイツ等の話じゃ、ここに来てまだ1日も経ってない。
不安でしょうがない筈だ。俺だったら気が動転する。
なのに笑えるコイツ等が、素直にスゲェと思った。
「早速だけど、お願いがあるの」
「何だい?」
「このポケモン達のトレーナーになってくれ」
トレーナー…?
って、何だそりゃ。
「アスカちゃん、カズキちゃん。トレーナーって何?」
「一般的にポケモンの持つ人全体の事を指すよ。親だったり、主人とも言うかな」
「…何故、俺達に預けるのだよ」
「ん?何が?」
「会って間も無い人間に、そんな簡単にポケモンを託していいのかと聞いている」
「だって、ソイツ等がもうお前等の事好きらしいんだもん。いなかった間大変だったんだぞー。『ご主人は何処だ!』って五月蝿くって。メシあげたら大人しくなったけどさ」
「だが、悪用される心配などはしなかったのか?」
「悪用するかしないかはともかく、ポケモンが懐いてるんだよ?誰だって好きな人の傍にいたいものじゃない?」
つまり、悪用されてもポケモンがそれを知った上で俺達と一緒にいたいと望むならそれでもいいって事か。
凄い理屈だが、ポケモンを尊重してんのか。
「そういう事なら構わない。キッチリと面倒見るよ。全員、いいな?」
「「「異議なーし」」」
「征十郎って、皆のボスか何か?」
声をそろえて言えば、アスカにちょっと引かれた。
確かに今は赤司から渡された選択肢が「はい」か「オッケー」しか無かったが。
「あ、そういえば」
「どうかした?」
「俺、コイツの名前知らねぇ」
「「「……あ」」」
全員、忘れてたな。
まぁ、呼ぶ機会も無かったし。
「あー、そっか。それも説明せにゃならんのか」
「口調が可笑しくなってるよ」
「あいや失礼。それじゃ、順番に教えますかね」
アスカはにんまり笑って言った。
コイツ、ポケモンの事になるとホントに楽しそうだよなぁ…。
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