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「雪ん子、ッスか?」
「はい。小さくて、顔が黒くて、大きい口が特徴的でした」
「人間じゃないのか?」
「違うと思います。少なくとも、日本語を喋ってる感じはしませんでした」
学校に着くといつものバスケ部メンバーが集まった。
さっき出会った雪ん子の話をすれば、全員の視線が僕に集中したのが分かる。
ミスディレクション、便利ですね。
「へー。そーいえば、俺達も見たぜ。ヘンな生き物。なぁさつき」
「うん。可愛い子だったよね」
「俺も見たッス。コンセントみたいなのが頭に付いてたッス」
「そうなんですか?赤司君達は何か見ました?」
「見たよー。ロウソクみたいなの」
「俺も見たよ。オレンジ色のヒヨコだったな」
「…自分の目を信じるならば、見たのだよ」
…全員が出会ってる、と。
これは、偶然ではないように思います。
「一体なんなんスかねぇ」
「一般的に考えたら、どこからか脱走した動物なのだよ。又は密輸か」
「み、密輸!?」
「例え話だ」
「全員、その生物は隠して来たな?」
「うん。学校終わったら迎えに行こうと思ってるー」
「ならいい」
「それにしても、不思議だよね。あんな生き物見た事ないもん。一瞬、目を擦ったよ」
「僕もです」
あの生物は何なのか。
疑問は募るばかりですが、これから部活です。しっかり気を引き締めないと怪我をしてしまいますね。
皆で体育館に入り、部室を目指す。
扉を開けて、いつもと同じ空間が目に入る――と思いきや。
これまた驚く存在が飛び込んで来ました。
「女の子…?」
「寝てるッスね」
「どこから入ったのだよ」
部室の床に倒れていたのは、2人の女の子。
見たところ同い年。そして寝ています。
部室の窓から光が差し込み、2人の髪が反射して…。
不謹慎ではありますが、かなり綺麗でした。
「うわー…。メッチャ美人さんッスね」
「きーちゃん。それより毛布を掛けてあげないと」
「桃井の言う通りなのだよ。春とは言え、まだ肌寒い」
「でも黄瀬の言う事も分かるぜ。顔は悪くねぇ」
「でしょ!?」
「こら黄瀬。静かにしろ」
「眠りが深いねーこの2人。部室って寝心地悪いと思うんだけど」
部室の床って冷たいですからね。
…そうじゃなくて、僕はこの2人が抱き抱えている生き物に目が行きました。
赤い髪をした子の方は黄色の体毛を持った耳の大きい生物。黄緑色の髪をした子の方は長い耳に茶色の体毛、首回りが白いです。
朝見た雪ん子と同じく、見た事無い生物。
「…赤司君」
「ああ、俺も同じ事を考えていたよ」
この少女達は、僕等が出会った生物と繋がりがある。
確証は無いですが、恐らくそうでしょう。
暫く全員で様子を見ていると、黄色の生物が耳を揺らした。
クリッとした黒目が愛らしい黄色の生物は、周りの誰かを映していました。
「……ピ、チュ…?」
寝惚けているのか一言そう漏らし、しかし一瞬で赤毛の少女の腕から飛び出した。
その眼光は鋭く、敵を見て警戒している様に感じられる。
「うわっ、何スか!?」
「警戒されているのだよ。無駄に動くな黄瀬。狙われるぞ」
周りを隙無く警戒し、尚且つ主人である少女の傍を離れない。
恐らく、一歩でも動けば即座に攻撃されるでしょう。
しかもこの生物、赤司君と緑間君の事を特に見張っている様です。
成程。敵は未知数だけど、狙うとしたらまず頭……司令塔という訳ですね。中々賢いです。
「ピチュ!ピチュピーチュ!!」
「何言ってるか分かんねーよ!」
「大ちゃん、落ち着きなって」
「この子はいきなり囲まれて怯えているだけでしょう。此方が反応してしまうと、更に状況は悪化します」
「チッ」
とりあえず、状況悪化のシナリオは防ぎました。
あとは…この少女達の目を覚まさない限り何とも言えませんね。
「う……ピチュー?」
「ピ!?ピチュ!!」
「おう。平気…頭を少し打っただけだ」
「ここどこ……?」
「ブイ……?」
丁度目を覚ましたようです。よかった。
目立った外傷も無さそうですし。
「うわぁ、カラフルな頭だな」
「アスカ失礼!え、ちょ、本当にここどこ?」
「つか、お前等誰?ポケモントレーナー?
あとさ、そこにいる水色頭って人間?薄くね?」
「え?……うわぁああ!?いつから其処に!?」
「最初からいました」
「嘘っ!あ、その、ごめんなさい。失礼しました!」
「いえ。気にしないでください。慣れてますから」
「それって慣れる事なの…?」
「珍しいッスね。黒子っちを初対面の人が気付いたッスよ」
「なんか薄いな〜、と思って。人間じゃないかと思った」
「――話を戻していいか?」
「あ、すみません赤司君」
腕を組み、考え事をしながら立つ赤司君に謝って、会話を戻す。
「お前達は誰だ?それから、俺達は“ポケモン”と言う存在は知らないぞ」
「え?じゃあ、其処の子達は?」
「え…?」
黄緑の髪の子が指を指したのは部室の扉。
まさか、と思い指した方向を見れば、朝出会った雪ん子と、他の皆が話していた生物達が立っていた。
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