学力は
「じゃあ、私は主に2年生。手が空いてたら1年生も見ますね」
「助かる。じゃあ俺は3年を見てるから」
「はい」
部長に伝えて、人数を見る。
ざっと見て、そんなに多くない。聞けばレギュラーと準レギュラーだけらしい。
そんぐらいじゃなきゃ、私も見てあげられないけど。
「それじゃ、まず簡単なプリントを用意したんで…。これを解いて下さい。どれくらいテストの単元を理解しているかを見たいと思います」
私は転校生なので、どう考えても1年生の出題傾向は分からない。
けど幸い帝光も東京都内。同じ地区なら、簡単に割り出せる。
2年生は最初から居たし、先生の性格もある程度知ってるから確実だ。
あとは問題集を家の中から探して厳選してきた。
「――――はい、そこまで。では集めますね。採点するので、それまでは各自提出課題を進めておいて下さい」
時間は20分。問題は基本9割、応用1割。
さて、実力は……っと。
(1年生はやっぱり覚えたてで基礎は出来てる。2年生は計算の仕方があやふやだけど7割は理解してるかな。
そしてどちらも応用まで手が回ってない)
教科書を読み漁りながらノートにメモを取る。
課題プリントは少しずつやる予定だから情報は必要だ。
とりあえずどっちも基本問題をとにかく解かせる方針にして…。
1年生は正の数と負の数の認識が甘いからそこを意識。
2年生は一次関数のやり方を丁寧に教えるかな。
「(よし、これで行こう)あの、少し手を止めてくれますか?」
「……何だ?」
「(おお、海堂怖っ)えーと、さっきの採点したんで聞いて下さい。
どちらも、基本の“計算の仕方”は出来てます。しかし凡ミスが多いのと、応用に手が回ってない」
「でもこの問題、初めて見たぜ?」
「テストに今まで見た問題がそのまま出るなんてありえないよ。問題の数字を変えたり順番変えたり、何かしらしてくるでしょ。
まずは1週間で基本レベルの問題を確実に出来るようにして、応用問題に対応出来るところまで持っていきます」
「「「1週間!?」」」
「当然。テスト期間は2週間。最後の1週間は文章問題に力を入れたいからね」
実際、私は帝光中に居た時もこの勉強法を使ってきた。
1週間で提出課題をやりながら基礎を叩きこみ、残り1週間は教科書の文章問題を解きまくっていた。
基礎が出来れば応用も出来る。文章問題の式の組み立て方を覚えれば、後は基本通りに解いてしまえばいい。
これは私の自論なので、他人にオススメする気は一切無い。
が、これで私はあの『授業中は睡眠時間なガングロバスケ馬鹿(大輝)』と『授業に出れなくて頭が悪い忠犬モデル(涼太)』の赤点回避に貢献していた。
他にもさつきとか緑間とか赤司とかが教えていたけど、お蔭であのバカ達が赤点を取ったことは一回も無いという事実がある。
「中間テストに落ちたら補修と追試。しかも追試は試合と来た。
部活は大切だもの。その気持ちは私も分かっているつもり。だから私も協力は惜しまない。
休んでいる暇は無いよ」
その時、1、2年生の叫び声が盛大に響いた。
ちょっと危険地帯