部室へ
「……うわぁ」
桃城と約束をして、連れて来られたのは部室だ。
しかも只の部室じゃない。男子テニス部の部室だ。
もう一度言おう。男 子 テ ニ ス 部 の 部 室 だ 。
「何でこんなことに…」
桃城に連れられて歩いてる時から視線が痛かったけど、ここまで来ると拷問だ。
さっきから酷いくらい睨まれてる。いろんな女子に。
男テニ部は美形が多いし、性格も良い人ばかり。特にレギュラーは。
「遠慮しないで入ってくれよ!」
「うん、そうする」
とは言っても周りの方々に申し訳ない。
私より頭が良い人なんてそこら辺にたくさんいるのに。
「失礼しまーす…」
「いらっしゃーいにゃ!」
「うわっ」
な、何かに抱き着かれた!?
と思えば、目の前に特徴のある猫毛が見えた。
「…離れてもらえませんか。菊丸先輩」
「え〜。いいじゃーん」
「良くないです。とても良くないです。私の為に離れて下さい」
ここはまだ完全に室内じゃないんですよ…!
外にいらっしゃる方々からの目が、目が…ッ!
「駄目だって英二。今日は勉強のためにって、手塚が時間をくれたんだから」
「そうですよ。折角の時間は大切にしましょう」
「んー。分かったにゃ」
「有難う御座います」
ファンはさっきの大石先輩の声を聞いて帰ろうとしている。
どうやらこの人達は応援じゃなくて、レギュラーを見に来ているんだ。
帝光と同じだ。ここも。
「さて。こんにちは、皆さん。2年8組27番、黒子朔夜です。今回クラスメイトの桃城武の頼みもあり、男子テニス部の方々にテスト勉強を教えることになりました。
頼りないところもあると思いますが、やれる範囲でお手伝いしたいと思います。
どうぞ宜しくお願いします」
パチパチと拍手される。歓迎はされているらしい。
「すまないな。黒子も勉強したいのに、付き合ってもらって」
「いえ。気にしないで下さい。聞けば追試をやる日が試合と被るそうじゃないですか。
力になれるなら、手伝わせて下さい」
あそこまで泣き付かれたら断る気にもなれないし。
人に教えるのは自分の知識を再定着させるのに効果的だ。
なら完全に利益が無い、というワケでも無い。
「やれるところまで、頑張ります」
目線が気になる部屋