才能持ち

「黒子先輩!」

「…こんにちは、越前。元気だね」



お昼にまた招待されて、屋上で男子テニス部と交流中。

私は日曜日の疲れが抜け切らず、若干ぐったりしているんだけど。

まあ、桃城達は見ているだけだったもんね。

見てて面白いものなのかは分からないけど、「すごかった!」って興奮しながら教えてくれたから、少しは楽しめたみたい。

あの試合後、6番が――



「完敗だ。驚いたぜ、女でもこんなスゲェ選手がいたんだな」

「それは有難う。貴方も、結構良いプレイを見せてもらったよ。あんなに追い詰められる試合は久しぶりだった。
ただ、相手の選手を傷付けるのは止めた方がいいと思うけど」


「それを言われたら反論出来ねぇな。あれはストレスが原因っぽくてな。まあ、これからはやらねぇよ。まだまだ強い奴がいるって分かったからな」

「――そう。それはよかった」

「またやろうぜ」

「うん、またね」



どうやら周りに相手にしてくれる人がいなくなって、イラついていたらしい。

その気持ちは分からなくないから、納得。


テツヤの傷はそんなに深くないから、今日からもう練習に復帰するらしい。

赤司に注意するようにメール打っとこうかな…。



「なあなあ、何でそんなにバスケ上手いんだ?」

「え、何でと言われましても……」

「周りにいたレギュラーも強かったし、どんな練習をしてんだよ」

「さあ…?何だろうね」



私はもちろん、殆どが才能持ちだからねぇ。

それに加えて赤司のゲームメイク。さつきの情報収集。

そしてあの濃密でよく考えられた練習内容。それがあってあそこまでの力を引き出しているんだろうとは思うけど。

それを口で説明するのは、ちょっと難しい。



「桃城の周りにはいない?努力してるけど、それプラス元からの才能を感じる時って」

「あー…部長と不二先輩かな」

「あれ、桃城。そんな風に思ってたんだ」

「確かに不二先輩とか部長とかの試合は完璧ッスよねー」

「普通離れした実力を持った人のことを、私は総じて“才能持ち”って呼ぶんだけどさ。帝光は何故か、そういうのが集まりやすい…っていうか、校長が選んでるっぽくて」



バスケ部はその中でも異常に密集してしまった場所と言っても過言じゃない。

実際男バスの一軍レギュラーは比べ物にならないし。



「ふーん。怖いな、帝光中」

「そうでもないけど。他校からはよく近付きにくいとは言われるね」

「ねえねえ朔夜ちゃん」

「何ですか菊丸先輩?」

「試合観戦してる時、隣の席から“白雪姫”って単語が聞こえたんだけど…何か意味あるのかにゃ?」

「――げ、」

「俺も聞いたな。確か後半戦だった気がする」

「大石先輩も…」



あれを聞かれてるのは最悪だ。

痛々しい呼び名だしねぇ…。



「“白雪姫”。ドイツのヘッセン州地方の民話。後にグリム兄弟の『グリム童話』に収載された。(ウィキペディアより)」

「そういう意味じゃなくて…。何か、通り名っぽかったよ」

「(駄目か…)お察しの通り、私が帝光にいた頃から呼ばれている通り名です」

「カッコイイッスね」

「有難う。でもあんまり好きじゃないから、呼ばないでね」



私の髪色が薄い水色で雪っぽいことや、プレイスタイルが消えたり見えたりすることから付いた名が“白雪姫”。

敬意と畏怖を込めて呼ばれている……とか、さつきが言ってた。



「じゃあバスケ部に聞いてみよっかな」

「お願いだから止めて。私はここで静かに暮らすんだから」



絶対に知ってるとは限らないけど、通り名は結構流れてるんだから。

本名は知らないと思うけど。



「また帝光に行きたいね。テニス部と試合してみたい」

「えー…。まあ、いいですけど」



絶対勝利が理念だから、つまらないと感じるかもなぁ。言わないけど。

けど確実に言えることは、さっき教えた才能持ち。

手塚先輩や不二先輩だけじゃない。この場にいるレギュラー全員がそれぞれ違う才能持ち。

試合してるところ見たいな、とちょこっと考えた。






テニス部への期待

mae ato
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