試合・後編 2
ガコンッ!
それは一瞬。
私が出るゲームは、一瞬の内に逆転する。
「な、にッ…!?」
「悪いね。チンタラしてる暇は無いの。なんせ、あと1分でダブルスコアまでやらないといけないから」
私がさっき放ったボールは、綺麗な弧を描いてネットをくぐった。
スリーポイント。
「ウソだろ?殆どエンドラインからだぞ?」
「そう?なんてことはないけど」
まあちょっと遠いかも。
呟けば、緑間に溜息を吐かれた。ちょ、何さ。
「あの距離を“ちょっと遠い”ぐらいの軽い気持ちで言えるのはお前くらいなのだよ」
「緑間だってあれぐらいするでしょ」
「俺はまだセンターラインまでだ」
「そーだっけ?」
いいじゃん。細かいことは。
つーか、いつまで相手チームはボーっとしてるの?早くボールを出してよね。
「見えたか?今のボール」
「いや…。気づいたらネットをくぐってた」
「何なんだ?いったい……」
観客がどよめき出した。
そういえば、青学の人達は来たって赤司とテツヤが言ってたっけ。
恥ずかしいな、なんか。
あんまり学校では目立ちたくないのに。
「まあ、いっか」
考えても面倒だ。
それよりも試合に集中しないと。
やっぱり、主にボールを持つのは6番。それ以外の人はパスやゴール下でのリバウンドに専念している。
無暗に他の人が突っ込めば、キセキの返り討ちになると思ったんだろう。
だから逆に言えば、この6番さえ押さえればラクになる。
相手とせめぎ合い、攻防を繰り返す。
なかなか攻めないな…。
シュッ!
あ、やられた。
「紫原!リバウンド!!」
「はいよー」
2メートル越えの紫原。簡単に跳ね返ったボール取ってくれた。
まさか6番がスリー打ってくるとは予想外。
何が何でも攻めてくると思ったのに。
そろそろ、本気出しますか。
「赤司」
「ああ」
パスを貰い、6番と向き合う。
けど無駄。私の攻撃は全て“見えない”。
例えテツヤのミスディレは効かなくても、ね。
「見せてあげる。私の実力を。教えてあげる。私がなんて呼ばれているか」
それは一瞬。
絶対に見えない技。
――――インビジブル。
私はコート上から姿を消した。