試合・中編 3
ピッ!という笛の音が、やけに耳に響く。
試合中断の合図だ。
審判と、味方が囲む中心部には、テツヤが頭から血を流して倒れている。
あの6番の、パスに見せかけた強くて速いボールは、テツヤの頭に直撃した。
その瞬間に倒れて、頭を強く打って血を出して。
もちろん、試合続行は不可能だ。
「桃井、救急箱を用意してくれ」
「うん!」
「青峰、黒子を運べるか」
「おう」
「審判。すみませんがタイムをお願いします」
テキパキと指示を出す赤司を尊敬するよ。
今の私は震えて動けない。
そんな体を必死に動かして、テツヤの傍に行った。
「…テツヤ」
「朔夜……。すみません、怪我、して…」
「いいよ。テツヤの所為じゃない」
そう。あいつが。
あの6番が、やったんだから。
傷口の消毒をして、ガーゼを当て、包帯を巻きつける。
「テツヤの代わりは私が出るよ。休んでで」
「でも」
「大丈夫」
無理言わせてもらうよ。
もうあんまり我慢が効かないんだ。
「青峰、俺と交代してくれ」
「な、まだやれるぞ!?」
「黒子の傍にいてやってくれるか。朔夜もあまり制御が出来なさそうだからな。俺が中で指揮を執った方が確実だ」
「…分かった」
「帝光、メンバーチェンジです」
大輝と赤司、テツヤと私が交代する。
やっぱり大輝も限界だし。体力とか。
「次は女か?」
「…どーも」
「ふん。弱そうだな。帝光ってーのは女を頼んないとまともに試合も出来ないのか?」
「好きに解釈すればいいんじゃないですか?それと、一つ言っておきますけど」
「あ?」
「私は、私達は、荒っぽいラフプレーでしか点を取ることが出来ないあんたよりは強いですよ」
「テメエ、いい度胸じゃねーか!!」
「私だって、只の女じゃないです。
仲間を、片割れを傷付けられて冷静でいるほど、薄情者でもないんだよ」
普段はあんまり面倒なことはしないんだけど。
今回ばかりは話が別だ。
「あんたのマークには私が付く。時間があんまり無いから100点ゲームは無理だけど。
トリプルスコアぐらいにはしてあげる」
悪いけど、ここからは私の独壇場。
後悔させてあげるよ。こんな状況を作り出したことをね。
「格の違いを見せてあげる」
反撃開始の合図