試合・中編 2
第3Q、残り2分。終盤に近付いてきた。
その時だった。何かの違和感を感じたのは。
6番がどこかを、何かを追いかけるような仕草をし出した。
大輝の相手をしながら、けどどこかを見ていて。
この違和感は何だ?
あの6番は何をしている?
「朔夜ちゃん?」
「…………」
「朔夜?」
2人が声を掛けて来るけど、ちょっとごめん。今無理。
だってあの6番が、パスカットをいとも容易くやっているから。
「……ねえ、赤司」
「どうした?さっきから黙り込んで」
「さっき、“6番が狙っているのは大輝だけじゃないかもしれない”って、言ったよね?」
「ああ。言ったが」
「それってさ、もっと強い奴を探してるってこと?」
これは仮説だ。
けどありえない話でも、ない。
「そうとも言えるな。だが恐らく違う」
「うん。私も思った。さっきから変に周りを見渡してるあの6番の動きとか」
私が、赤司が。
思っていることが同じで、しかもそれが確実なものなら?
思考をしている時に、試合中で、ボールの関係上ベンチの近くに来た6番が言った。
「キセキの世代なんてこんなモンかァ?ガッカリだ」
「調子乗ってろよ。そういう時に足場は崩れるもんだぜ」
「クク。そうだ。オレが一番好きなことを教えてやろうか」
「は?」
「弱肉強食って知ってるか?」
弱肉強食。
強いものが、弱いものを食べていく、という意味でよく使われる。
それが、意味するものは?
「オレは確かに怪我人を出すぜ。強いヤツも。弱いヤツも。
お前みてーなヤツを壊すのも好きだ。けどな、オレが本当に好きなのは…」
ボールが、6番の手に渡る。
「ヤバい、テツヤ!」
「チームで最も弱いヤツを」
あの6番はキセキと同等に戦える。
なら分かっているし、“見えている”。
「壊すことなんだよ」
私と赤司が立てた仮説。それは、
“キセキと同等の実力者なら、ミスディレクションが効かずに見えている”
ということだった。