試合・中編
「はあ。つっかれた」
「お疲れ様、朔夜ちゃん」
「ホントにね」
ああ、もう疲れた。
取り返すだけ取り返したけど。お蔭で逆転し、今は40‐25。
ダブルスコアにはなったらしい。
「次の第3Qが勝負だね。テツヤ、交代」
「はい、頑張りますね」
「第3Qは緑間、青峰、紫原、黄瀬、黒子。この5人で行く。
くれぐれも油断はするな」
「それに絶対無理もしないこと。特に大輝!」
「はぁ!?」
「相手からしてあんたのマークは6番よ。怪我しないでね」
「…おう」
何だその微妙な返事は。
まあ無理しなければなんだっていいけどさ。
けど……なーんか気に入らない。あの6番。絶対にまだ何かする気だし。
「テツヤ」
「はい?」
「気を付けてね」
「――はい」
テツヤは気づかれにくいけど、その分意識をし出したら少し見えやすくなってしまう。
それにあの6番の実力は高い。ちとキツイかもね…。
心配事は拭い去れないまま、第3Q開始の笛が鳴った。
*****
第3Q開始1分。6番が動き始めた。
変わらずの荒っぽいプレイにだんだん押され始める。
狙いは、やはり大輝。
「なんていうか、悲しくなってくるねぇ」
「何がだ?」
「大輝があそこまで押されてる。普通なら喜ぶじゃん。自分と対等かそれ以上の実力を持ってる人が相手してくれてる。
けど、さ。今回は相手が相手だから…」
「…そうだな」
キセキの世代、だっけか。
そんな風に呼ばれ始めてどれくらいだろう。
自分が強ければ勝利の数は増える。
けどそれと比例するように、戦ってくれる相手は消えていく。
それで久々にそれなりの人が来てくれたと思ったら、これだもん。
「楽しんでるよ、あれ。絶対6番ってドSだ…」
「そうかもな。それに…」
「どうかしたの?」
「いや、あの6番……。
もしかしたら狙っているのは青峰だけじゃないかもしれない」
「?、それってそういうこと?」
「いや…」
歯切れの悪い赤司なんて珍しい。
少し不思議に思ったけど、仕方がないから試合の方に集中した。