試合・前篇 3
「お疲れ様」
「おう。気をつけろよ朔夜。あの6番」
「大丈夫。次のクォーターには出ないみたい」
第1Qが終了し、選手の交代が入る。
見たところ、緑間とテツヤはいつも通り。けど、大輝がちょっと疲れていた。
やっぱり大変だなぁ。フォワードって。
「さて、と。
ほら、君。さっさと足出して」
「え?」
私、一応マネージャー業もやってたんです。
他の一軍…第1Qでは11番と13番に声を掛けた。
いや、だってずっと13番は足引き摺ってるし。
11番は多分肘をやられてる。
どっちもバスケじゃ大切なところだから、早く冷やすかテーピングしないと。
「…はい、出来た。
11番君はよく患部を冷やすこと。13番君は足を動かさないようにして。
試合が終わったら必ず病院に行ってね」
「「あ、有難う御座います」」
「どーいたしまして」
手当てが終わり、ジャージを脱ぐ。
リストバンドを付けて、コートに立つ。
そこにいるのは、“9番”のユニフォームを着る、私。
「12番君、14番君はパス回しに徹して。シュートは確実に。無理をしないこと。
涼太は私と点取り。紫原は…うん、ゴール下で待機」
「「はい!」」
「りょーかいッス!」
「は〜い」
「私は久々なんだから、フォローしてよね」
別にそこまで本気を出す気は無いけど。
そんじゃ、れっつらごー。
*****
「第2Qを始めます」
ピッ!という笛の音と共に、ボールが審判の手から離れた。
最初は、敵ボール。
「んじゃ、行くよ。涼太」
「オッス!」
――ミスディレクション、発動。
「なっ!?」
「取られた!?」
「遅いよ」
ミスディレを発動した私は周りから見えにくくなる。
だから簡単にボールもスティール出来るんだよねぇ。
そのままダッシュで切り込む。
足の速さには自信があるから、現在フリー。
レイアップを決めて、まず2点を取り返す。
「急げ!攻めろ!!」
「涼太!」
涼太に声を掛けて、ディフェンスを促す。
すぐにボールを取り返し、また2点を入れる。
これで同点。けど、なーんか違和感があるなぁ。
第1Qの時と全然動きが違う。というか、実力?
ってことは、あの6番がこのチームの中で要となっていることが分かる。
今の内に点差を広げた方が良さそうだ。
「紫原。失点が3ゴール以内だったらまいう棒の新作を買ってあげるよ」
「分かった〜。頑張るー」
「涼太。ノルマは10ゴールね」
「え、マジすか!?」
「文句無しね。私もそれくらい入れるから。
他の人はボール回し。とにかく、私か涼太にバンバンパスを回して」
「「は、はい!」」
「あの6番がいない第2Qで、出来るだけ点差を広げるよ。3・4Qで楽になれるように。
最低でも15点差はつけるからね」
まだ試合はこれから。
けど少し心配事があるから、早く終わるように。
そう思いながら、また私はレイアップを決めた。
面倒な敵