試合・前篇

越前side.



約束の日曜日。朔夜先輩の転校前の学校…帝光中学に来た。

何でも帝光中は都内屈指のマンモス校で、部活も勉強も優秀な成績を収めている、らしい。


……とゆーか、



「デカい…」

「広いにゃ〜」

「流石マンモス校だな」



オレ達も私立だけど、ここまで広くない。

さっきテニスコート見て来たけど、6つも面があって驚いた。

だから勿論、体育館も目立つ。

まあ、迷う必要がないからいいけど。



「すまない。観戦の誘いを貰った青学だが」



部長が近くにいたバスケ部員に声を掛ける。

すると、「少し待って下さい」と言って向こうにいた髪が赤い男子を連れて来た。

染めてんのかな。



「お待たせしてすみません。帝光中男子バスケ部部長、2年の赤司です」

「青学3年。男子テニス部部長の手塚だ。招待、感謝する」

「いえ。此方こそ、我が部員がお世話になっています」

「ああ…。黒子か。こっちも部員と仲良くさせてもらっているからな。お互い様だ」

「そうですか」



オッドアイの赤司と名乗った部長は、リーダーの資質を持っているのは肌で分かった。

威圧感が半端ない。

手塚部長と同じオーラをした人だった。



「――赤司君」

「…ッ!」



驚いた。いきなり人が現れた。

先輩たちもビックリしたみたいで、菊丸先輩なんか目、見開いちゃってるし。

唯一平然としているのは、赤司さんだけだ。



「ああ、どうした?」

「対戦校がいらっしゃいました。挨拶がしたいそうなんですが…」

「分かった。すぐに行く。
という訳なので、すみません。ちょっと失礼します。
テツヤ。青学の皆さんを観客席へご案内してくれ」

「分かりました」



赤司さんはお辞儀をして玄関の方へ行った。

代わりに、色素の薄い水色の人が残った。

ってか、影薄っ。



「赤司君に代わって、案内します。2年で一軍の、黒子テツヤです」

「黒子…?」

「姉がお世話になっています」



姉…?

もしかして、朔夜先輩の弟?



「僕と朔夜は双子なんです。僕は弟ですよ」

「あーー!確かに似てるにゃ!」

「へぇ。弟いたんだ」

「朔夜は馴染めていますか?青学に」

「俺、同じクラスだぜ!」

「どうですか?友達とか、いますか?」

「うーん。あんまり特定の女子と一緒にいるのは見たことねぇな。基本自分の席で本読んでる」

「ああ、やっぱり…」

「けど勉強とか教えてくれるし、掃除当番代わってくれるし、いい奴だぜ?」

「…そうですか。少し安心です」



そう言った黒子さんの顔は、ちょっと優しかった。

それぐらい、心配なんだと思う。



「此方です。もうすぐ試合は始まると思うので、ゆっくりしていて下さい」

「助かった」

「いえ。では、失礼します」



小さくお辞儀して、黒子さんは去って行った。

案内された席は、体育館全体のコートが良く見える、絶好のポイント。

朔夜先輩の計らいなのかな。


アップをしている選手を見て、早く始まらないかな。と胸を躍らせた。


mae ato
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