ちちんぷいぷい、元気になるおまじない | ナノ




俺がおひさま園に来たばっかりでまだみんなに馴染めなくて一人でブランコに座っていたら彼女が来てにっこりと笑った。「ひろとくん、元気ないね。わたしが、おまじないかけてあげる!ちちんぷいぷい、元気になあれ!」そう言って彼女は俺におまじないをかけた。嬉しくて俺は笑ったのを覚えてる。





重たい瞼を開けると一気に視界が明るくなったが彼女の影ですぐ暗くなる。「やほー熱測んべーはい体温計はさんでー」ぼんやりとした頭でされるがままになる。「ヒロト!大丈夫?辛くない?」彼女が脇に体温計をはさんでいると隣から緑川が顔を出す。「リュウジはもっと静かにしてねー」「あっ、ご、ごめん!」「いい子」彼女が緑川の頭を撫でると緑川は少しだけ嬉しそうにしていて、それを見て俺も少しだけ笑った。

体調管理には気をつけていたつもりなのについ二日ほど前に風邪をひいた。咳をすれば「だっ、大丈夫!?」と大きな声で緑川が言い、彼女に「リュウジはポカリ持って来て」と言われすぐに「わかった!」と返事をして部屋を出て行った。彼女がベッドに腰掛けるとぎしりと鳴った。

「なに笑ってんの」「だって、おかしくて、ふふ」「リュウジかわいいもんね」見上げた彼女は笑っていたから昔のおまじないを思い出した。「おまじない覚えてる?」「おまじない?ああ、覚えてる、元気になるやつでしょ」あんなんで元気になれるわけないのにねと彼女が笑った。「なに、元気欲しいの?」「貰えるなら欲しいよね」「仕方ないなあ、」


ちちんぷいぷい、元気になあれ


ぴぴぴと体温計の無機質な音が響く中おでこに触れた彼女の唇が冷たく感じた





title/あいまい




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -