さいごの夏休み | ナノ




夏休み。それは一体何なのだろうか。辞書で夏休みと引けば学校・会社などで、夏季に設けられた休暇。と出た。ふうん、そうか、休暇か。じゃあ何で宿題って出るのかな。休暇のはずなのになあ。休暇のはずなのに宿題が出されちゃ休めるものも休めないよ。迫り来る夏休みの最終日と解いても解いても減らない宿題が怖くて夜だって眠れないよ。夏休みってとっても儚い。教師ってとっても酷い。生徒に大量の宿題を押し付けて自分は旅行に行ったりして、夏休み明けの最初の授業で旅行に行ったのよ〜なんて自慢して、そんでもってじゃあ宿題回収ーなんて声を張り上げる。自分だけ楽しい思いしやがってくそう。私だって旅行に行きたいし(そこまで行きたくないけど)海だって行きたい。毎年毎年わたしの夏休みは宿題に追われて遊びどころじゃない。ちくしょおおおおおおおお

「いいから、手動かして。それに君は毎日ゲームばっかして十分楽しんだでしょ」
「うへーい」

実は今日は夏休み最終日である。そして、彼、基山ヒロトが言ったように私は旅行や海に行かなかったもののゲーム三昧で、それはそれはものすごく楽しい夏休みを過ごしていた。おかげで私は忘れていた。宿題を。問題集なんかはヒロトが解いたものを写している。しかしだ、絵日記はどうしようもない。この年になって絵日記なんてふざけてる。夏休みが始まったばかりの頃は「絵日記とか超よゆー!」なんて言ってた私ふざけてる。たった三日分の絵日記を書くだけなのに書けない。というかゲームか寝るかしかしてない私に何をどう書けと。

とりあえず一日目には「今日はゲームをしました。レベルアップしました。頑張ってよかったです」とだけ書き、頑張ってレベルアップさせている私の姿を描いた。二日目には「今日はたくさん寝ました。なんだか身長が伸びた気がします。もっと寝て大きくなりたいです」と書いた。ぐっすり眠る私を描いておいた。そこで私は気付く。三日目の絵日記が書けない。自分の記憶力を信じて今までの夏休みで何をしてきたか思い出すが特に友人と遊ぶわけでも無く、先程言ったようにゲームと寝ることしかしていないのでもう書けない。持っていたシャーペンをテーブルへ投げ出して伸びをしながら後ろへ倒れると窓から見える空が青かった。「今日って晴れてたんだ」小さく零すとヒロトの溜息が聞こえた。

「…早くやらないと夏休み終わっちゃうよ」
「だって夏休み何もしてないから書けないよー」
「はあ…」

あ、また溜息。幸せ逃げちゃうよ。ほっと勢いをつけて起き上がると私を見てるヒロトの顔が目の前にどん。一瞬だけ驚いて目を見開くがすぐに元に戻ってヒロトの髪を少しだけ摘まんでみる。赤いな。この髪って地毛だよね。根元みても赤いし。ああそうだ、三日目の絵日記にはヒロトの髪が地毛かどうかを調べたことを書こう。そう言うとヒロトはくすくす笑って赤い髪を揺らした。





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