いってらっしゃい | ナノ




父さんと一緒に帰ることは出来なかった。みんなボロボロに傷付いて緑川なんて泣いていた。俺は、グランじゃなくなった。


それほど時間は経っていないはずなのに随分長い間おひさま園を離れていた気がする。ニュースにもなったし彼女もきっと俺たちがこれまでやってきた事を知っているのだろう。彼女は俺たちを受け入れてくれるだろうかという不安がよぎる。

たらららん、たらららん、「…これ、」緑川が驚いたように目を見開く。みんなを見れば同じように驚いたように目を見開いていた。たらららん、たらららん、静かな静かなピアノの音が聞こえる。彼女は俺たちを受け入れてくれるのだろうか。そんな不安でいっぱいになって目の前の扉を開けれずにいる。姉さんがそっと俺の背中を押す。ゆっくりと扉を開けばピアノの音は聞こえなくなり、代わりにぺたぺたと裸足で走ってくる音が薄暗いおひさま園に響いた。ぺたぺたと走ってきた彼女は見開いた目に涙を浮かべてすごく優しく微笑んだ。



「おかえりなさい」



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