しあわせガール | ナノ




照美くんは何をしているときがしあわせ?、と首を傾げて彼女がそう聞いてきたので、僕が、みんなとサッカーをしている時がしあわせだと答えると、そうだと思ったと笑った。彼女は僕の前の席に腰掛けて窓の外を見ている。今日はとてもいい天気で窓から見える空には雲ひとつ無かった。サッカー日和だねと彼女が言ったので、そうだねと返事をした。


僕から見た彼女は少しだけ変わった子だった。誰かにいくつも頼みごとをされて苦しいだろうにいつだって笑っていたし、その頼みごとを断ることもなかった。最初見たときはただのお人好しかと思っていたけれど自分から苦しい道に進む彼女は少し変わっていると思った。
今だってそうだ。日常生活での会話で「君は何をしているときがしあわせ?」だなんて会話があるだろうか。少なくとも僕はそんな会話をしたことがない。


「照美くんは綺麗だから綺麗な花が似合うね」
「そう?」
「うん、きっと似合う」


そう言って彼女はにこにこと笑う。
僕は彼女の笑っている姿以外を目にしたことがない。ただのクラスメートという立ち位置だから仕方ないのかもしれないのだけど。けれど、不思議なことに彼女と関る人はみんな彼女のように笑う。僕にはわからない。ふと、さっきの言葉を思い出して彼女の言葉を真似て同じ質問をしてみる。「君は、何をしているときがしあわせ?」そう聞けば少しだけ目を開いた後に、にっこりと笑って言う。


「私は、照美くんとこうやってお喋りしている今がしあわせ」


次は僕が少しだけ驚いて、笑うばんだった。



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