恋ってすてきね | ナノ




彼は部活でいつも大変そうだったし、わたしはわたしで、両親共働きのなか、まだ幼い弟の面倒を見ることで精一杯だった。付き合っているはずなのに、そんな雰囲気は何処にもない。わたしと喜多くんにはすれ違いどころか、すれ違いのすの字もないのだ。
そんな関係のなかで、「23日に話がしたいから時間をとって欲しい」とメールが来ればこれはもう別れ話としか思えない。付き合おうと言ってきたのは彼だがすれ違いのすの字すらない関係だ。別れるのも無理はないだろう、そう思う自分がいた。


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いつもなら休みだと言うことに喜んでいたが今年の23日は何だか気が重いな、と苦笑した。公休日のため、休みを貰っている両親と弟を横目に家を出て待ち合わせの場所へと足を動かせた。
約束していた時間の5分前には着いたのに彼はもうとっくに着いていて、わたしを見つけるとマフラーに顔を埋めながらも目を細めた。「体、冷やしただろう。まずは温まろうか」差し出された手に驚きながらもおずおずと手をかさねた。冷えた手に、手袋してこれば良かったと後悔しながら小さく、遅れてごめんとこぼす。すると彼は、俺も今来たところだったから大丈夫だと鼻を赤くしながら笑った。


窓から見える通りはクリスマス前ということもあってイルミネーションがきらきらと光っている。あの可愛らしい格好をした女の子はたぶん、彼氏にでもクリスマスプレゼントとして渡すのだろう。そしてたぶん、今はそのプレゼント探しだ。クリスマスプレゼントねえ。わたしには何だか関係の無い話に思える。「話したいことって言うのは、」あ、きた。何だか別れる前のカップルみたいでおかしい。何ひとつ間違ってはいないけれど。店員さんが持ってきてくれたココアに冴えない自分の顔が映る。


「25日は部活が入っているから会えないけど、31日は休みをもらえたんだ」
「…うん?」
「だから、もし良かったら31日は弟くんも一緒に遊べないかって…」


少し慌てながら「予定があるならそっちを優先してくれ」と付け足した。
別れ話と思って構えていたのになんだか拍子抜けしてしまう。「大丈夫、弟もよろこぶと思う。きっと喜多くんにすぐ懐いちゃうよ」わたしの口元も強ばった喜多くんの表情も解れた気がした。安心したせいかほろりと涙がこぼれると、彼はさっき以上に慌てる。それが愛おしくってうれしくって、わたしたちのこれからに胸を弾ませた。


title/変身


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