良心の溺死 | ナノ




環境に優しいエコバックを持って買い物から帰ると玄関には見知らぬ可愛らしい靴がリュウジのであろう靴の隣にちょこんと置いてあった。お客さんだろうか。お客さんが来るなら来る前に言って欲しかったなあ、なんて思いながら買ってきた物を冷蔵庫にしまう。広場に行けば風介と晴矢がお昼寝中であった。いつもは喧嘩ばかりだがこうしていれば物凄く可愛いのは言うまでもない。頬が緩むのを感じながら向かう先はリュウジの部屋。

「リュウジ〜、おきゃくさ、あ、」
「えっ」
「えっ」

たぶん一瞬、いや、軽く5秒は動けなかっただろう。わたしの目の前にはあの可愛らしい靴が似合うやっぱり可愛らしい女の子と、その女の子に跨られているリュウジ(大丈夫、服はちゃんとまだ着ている)。女の子も少しは顔を赤くしているがリュウジほどでは無い。リュウジなんて顔を赤くするだけならまだしもあわあわしてやがる。そんなリュウジに舌打ちをしたくなるが私もあわあわしているので何とも言えない。「ごめんね〜」へへへと引き攣りながらも笑顔を作って扉を閉める。ノックしない癖がこんなところでも出てくるとは…!チクショウ!ごめんねリュウジ!せめてものお詫びで私はお昼寝中の風介と晴矢を叩き起こしてちょっと出掛けてくるよ!ずるずると寝起きの2人を引きずりながら環境だけじゃなくリュウジにも優しい私は園をあとにした。

コンビニに行けば2人は欲しいものを欲しいだけ(私のお金で)買いやがった。チクショウ!本日二度目のチクショウ!!そして公園のベンチに私も含めて3人で腰掛け現在に至る。隣からはアイスやポテチを噛み砕く音が聞こえる。ああ今日も天気がいいな。

ふと先程起こったことを思い出す。リュウジに跨っていたあの可愛らしい女の子はもしかしなくても巷で噂の「肉食系女子」というやつか。そしてリュウジは「草食系男子」というやつなのだろう。この前テレビで女子の男子化、男子の女子化が進んでると言っていたのは本当だったのか…!なんかお姉さん悲しい!リュウジったら情けない!前からヘタレだとは思っていたけ「なんかつまんね」え?ん?なんで君たち立ち上がってるの?ほら、ベンチに座りなよ!

「風もつめてーし帰ろうぜー」
「だめだよ晴矢!!空気読もう!!!」
「そうだな。冷えてきたし帰ろう」
「風介さっきまでアイス食べてたでしょうが!!」

だめだってばー。園に帰ろうとする2人の手首を掴むが引きずられる。「あっ!じゃあカラオケでも行こうか!ね!お金出すから!」そう言えばぴたりと足は止まりついでに引きずられていた私の足も止まる。「しかたねーなあ。カラオケ行くか」「カラオケにもアイスはあるだろうか…」
どうやらまだまだ私のお金はぶっ飛ぶらしい。覚えてろリュウジ。帰ったらお前をぶっ飛ばしてやる。



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