寝返りを打とうとしたら腰にぐっと力が入って寝返りが打てなかった。何なんだと薄く目を開ければつまらなさそうな表情をした宵一と目が合った。枕元に置いた携帯で時間を確認すれば夕方の4時。昼寝をし始めてまだ2時間しか経っていない。うううん、と唸って腰に回されている腕を解こうとするがその度にぐっと力を込めるから苦しくなってぐえっと女らしさのかけらも無い悲鳴をあげた。 「宵一、じゃま」 「つまんないんだけどぉ」 「もう少し寝かせろ」 「寝顔、不細工だったよ〜」 「……」 いつからだったろう。小さい頃はもっともっと可愛くて抱きしめたくなるような子だったのに。いつからこんなに可愛げの無い子になってしまったんだろう。つまらなさそうなその顔にパンチを食らわしたい。昔の宵一が恋しい。出来ることなら昔に戻って今のような性格が出来上がる前に私が性格を直してあげたい。ああそういえばいつの間にか身長も超されてたっけ。手も宵一のほうが大きくなっていた気がする。力も強くなったと思う。腰に回されている腕がそれを語る。しかし猫のように気まぐれでかわいらしい仕草は反則である。頬を撫でれば目を細めて少しだけ擦り寄ってくる。なんと可愛らしい。 「ふ、へへ、宵一、かわい」 「笑い方きもちわるーい」 「お前どんだけ私を傷つければ気が済むの」 すこし乱暴に宵一の頬を引っ張れば痛い痛いと騒ぐ。何だか私も調子に乗ってしまってぐにょんぐにょんともっと引っ張れば宵一が私の手に噛み付いてきて私はぱっと手を離してしまう。けれど宵一はぐっと歯に力を入れ続ける。痛い痛い!ばか離せうんこ!女子らしからぬ発言をしてしまうほど痛い。もう片方の手で宵一の頭を私から遠ざければ私がしたのと同じようにぱっと口から私の手を離す。解放された私の手にはくっきりと歯形が残っているし唾がついている。 「きったねーなもう」 「そっちが悪いんでしょ〜」 「確かにそうかもしれないけどさあ」 「ほらやっぱりねぇ」 僕は悪くないもーん。べー、と舌を出す。やられたからやり返してもいいってもんじゃないでしょ。そう言い返して出された舌に思いっきり噛み付いた。 |