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赤と青を混ぜて紫が出来上がる。赤はおかあさん、青はおとうさん。ふたりから紫の隼総くんが生まれる。ただ、普通に素敵なことだと思う。誰にも負けない強い紫。私はそれが羨ましい。
地味に静かに生きてきた私には人に物を言えない。つまり、流されやすい。この性格をどうにかしないといけないと言うことは十分理解していたが今の所どうにもなっていない。この流されやすい性格を色で表現するとしたら何色だろうか。存在の薄さも含めて透明になってしまうのではないだろうか。何それ笑えない。
「大人しくて先生の話もよく聞いてくれるので助かっています。ありがとう」通知表には大体同じことが書かれていた。大人しいのはただ自分の意見が言えないだけです。先生の話を聞くのもただ反抗する勇気が無いからなんです。心の中で言うものの届くことは無い。多分、私はこれから一生、人に流されて生きていくのだろう。そして流され慣れてきたら流れに逆らう事も無く静かに身を任せるのだろう。なんてつまらない人生。もっと勇気を持とうぜ自分。





「隼総くん」

4月の始めにまた流されて引き受けてしまった学級委員長。「委員長は放課後までにノートを集めて職員室まで持ってきてくれ」と数学担当教師の言葉。学級委員長になるもの放課後までにノートを集めるのも面倒臭くて嫌だったけれど嫌だと言えなかった。チキンか私は。もういっそのこと焼いて下さい。
私の目線の先には机に突っ伏す強い紫。いいなあ、なんて。確かノートを出していないのは彼だけだったはず。隼総くん。二度ほど呼べば体を起こしてくれる。ああ彼がノートを出してくれれば私はすぐに帰れるんだ。詰まっていない脳みその何処かでそんな事を思っていれば腕を引かれる。目の前には憧れていた強い強い紫。頭の中は真っ白のくせに顔が熱いからきっと顔は真っ赤だ。離された唇にはうっすらと紫が残っているのだろう。私の透明に紫が混じった放課後はそこまで嫌いじゃなかった。



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テーマ「人外ファンタジー」
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