さらさらのつやつや。 佐久間の髪の毛を擬音語で表現するとしたらこうだろう。あれだけ髪の毛を伸ばしていてもこんなに綺麗だなんて神様ってば不公平すぎる。 ぱさぱさのぼさぼさ。 わたしの髪の毛を擬音語で表現するとしたらこうだろう。放置していたら佐久間よりも伸びていて、気がつけばクラスで一番長くなっていたけれど放置していただけあって毛先なんて傷んで赤くなっている。そんな私の髪の毛を指で挟んで毛先をじっと見る佐久間なのだが何が楽しいのか私には全く分からない。 「赤い」 「傷んでるからねー」 「切るの?」 「切ろうかな」 「だめ」 「なんで」 「髪、好きだから」 「へえ」 佐久間の髪の毛を佐久間がしているように指で挟むとぱさりと挟まれていた私の髪の毛が落ちた。「え、なに」「いや、なんでも」「あっそう」短い会話を済ませばまた佐久間は先程と同じように私の髪の毛を挟んで毛先をじっと見た。わたしも真似して佐久間の毛先をじっと見てみるけれど枝毛一本ありゃしない。わたしの髪の毛と比べると悲しくなってくる。なんのケアもしないから枝毛だらけだし傷みまくっている。ドライヤーなんて気が向いたときしかやらないし、いつだって私の髪の毛はぼさぼさだ。はっきり言ってこんな髪の毛嫌いだ。汗かいたらべったりとくっつくし、風が吹けばぼさぼさの髪の毛が余計ぼさぼさになる。だから佐久間の髪の毛が羨ましい。交換したい。 「この髪、好き」 「佐久間の髪の毛?」 「違う、おまえの」 「わたしの?」 「うん」 「傷んでるのに」 「それでも」 「ふうん。わたしは?」 「髪より好き」 「なにそれ、告白?」 「かも」 聞かなければ良かったと少しだけ後悔した。こんな展開になるとは思ってもいなかった。ばかかと頭を叩いてくれれば良かったのに。けれど嬉しいと思う自分もいて頬の筋肉が緩むのが分かる。わたしも、小さく答えれば佐久間はやっぱり、と綺麗に笑った。 |