ほんとをしらない | ナノ




わたしを助けてくれたお父さんのことは大好きだったし、わたしと一緒に遊んでくれたみんなのことも大好きだった。けれどお父さんの計画は嫌だった。もうみんなとサッカーをしたいとは思わないしボールも見たくない。
リュウジなんてつい最近まで私とふつうにお喋りしていたのにいつの間にか敬語で話しちゃって。晴矢なんて顔に変な線なんて入っててバカに磨きがかかってて。風介なんてバカだけじゃ足りずに中二病にまで磨きかけちゃって。ヒロトなんて変な髪形しちゃって。ばかみたい。みんなばかみたい。まだまだ小さいけれど今以上に小さい頃にみんなで楽しくサッカーをしていたあの時が懐かしい。



「はやく、終わればいいのに」

ぽつりと零した言葉にヒロトの顔がすこし歪んだ。ああ、でも、今のヒロトは前みたいに笑う、わたしが好きだったヒロトじゃなくて、こわい顔をしたヒロトだから、グランと呼ぶのが正解なのかもしれない。グラン、私が嫌いなグラン。ほんとう、はやく、終わってしまえばいいのに。何にも見たくなくて膝に顔を埋めれば、ふんわりと上から体温を感じて抱きしめられているんだと知らせる。グランはどんな顔をしているんだろう。相変らずこわい顔なんだろうな。でもへんなの。グランの泣きそうな声が聞こえる。


「ごめんね」

なんであやまるの、へんなの。
へんなの、すごくかなしい。



title/変身



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -