あったかい | ナノ




グラウンドが見える教室で1人晴矢を待ってたら知らない女の子たちが私の席を囲んで、あんた南雲くんの何なのよって言われたから家族ですって言ったらぱちんと頬を叩かれて南雲くんがあんたのこと家族って思ってるわけないじゃない、ばかじゃないのって言われてどうすることも出来なくて。目を見開いた私を見た女の子たちは満足したように笑って私をまた1人にした。女の子たちがこうやって私に文句を言ってくるのは珍しいことじゃないのだけれど今回の言葉はきつかった。晴矢や風介やヒロトとはおひさま園で家族みたいに育てられてきたし私も家族だと思ってきたのだけれど、もしかしたら家族だと思ってるのは私だけなのかなあなんて思ったり。鞄と一緒に先ほど言われた言葉を引きずりながらゆっくりとグラウンドへ向かった。




「今日風介来なかったんだけど」
「あー…新しいアイス出たから帰るって言ってた」
「またかよ」
「うん」
「ヒロトも来なかったんだけど」
「夕ご飯の当番って」
「ふうん」

私たちって家族だよね?って聞きたいのに聞けない。今まで女の子に人気な晴矢や風介やヒロトと特に仲が良い私に文句を言ってくる子がいても、わざわざ私と晴矢達は家族じゃないのよなんて言ってくる子なんていなかったから考えたことも無かったのだけどよく考えたら血は全く繋がっていないわけだし。やっぱり家族じゃないのかな。なんて。そう考えるとすごく苦しくなった。晴矢達と私は家族にはなれないのかな、私はまた家族を失うのかな、なんて考えが頭の中をぐるぐる回る。

「何考えてんの」
「家族について」
「…ふうん」
「……」
「……」
「今日さ」
「ん」
「女の子たちに、あんた南雲くんの何なのよって言われたからさ、家族ですって言ったら、」
「…ん」
「家族だと思ってるのはあんただけだよって言われちゃって、それで、それで、」

私がゆっくりと歩いていた足を止めれば晴矢の影も足を止めた。瞬きをすればぽろりと目から何かがこぼれた。あ、わたし、泣いてる。晴矢の前で泣くのいつぶりだろうとかどうでもいいことをぼんやりと考えてると手を握られて、いきなりのことに驚いていると「家に帰るぞ」と晴矢が言った。私はうれしくて泣きながら晴矢のあたたかい手を握り返した。