ずっと想っても淡い | ナノ




私はマークに謝らないといけない事が五つある。一つ目は、好きな人がいる幼なじみのマークの事を好きになった事。二つ目は好きな人が彼女になったと嬉しそうにわざわざ報告してきたマークに「おめでとう」なんて思ってもない事を言った事。三つ目はマークがサッカーの試合に誘ってくれたのに、マークの彼女がいるからと本当は行かなかった事。四つ目はマークが放課後の教室で彼女とキスをしているところを見た事。

「あ…、ごめん、」混乱した頭で一応謝罪の言葉を述べ急いで鞄を取って教室を出る。あんな所を見るくらいなら先生の手伝いなんてしなければ良かった。先生が言う事なんて聞こえなかった事にしてさっさと帰れば良かった。走っていた足はいつの間にかゆっくりと廊下を歩いていて、放課後の廊下には私だけの足音しか聞こえないはずなのに、ばたばたと誰かが走ってくる音が聞こえる。少しだけ顔を俯かせるとぐっと肩を掴まれ強制的に後ろへ振り向かせられる。

「わっ…なに、」
「良かった、間に合って」

後ろへ体を向ければやはり走ってきたのか髪の毛が少し乱れたマークがいて。ああ、嫌だ、今はマークの顔は一番見たくないのに、なんて思いながらマークを見る。

「泣きそうな顔してたから」
「なにそれ、なんで私が泣かないといけないの、変なの」

だめだと分かってるのにマークの優しさに触れてじんわりと視界が滲みだせばマークがゆっくりと私を抱きしめる。彼女のところに行きなよ、彼女を抱きしめてあげなよ、そう言いたいのに口からは嗚咽混じりの「ごめんね、ごめんね、」という謝罪の言葉しか出てくれなくて。


マークに謝らないといけない事の五つ目は、マークに抱きしめられてすごく嬉しいと思ってしまったこと。



title/変身



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